2017年08月26日

カラス対策にフラッシュ光の「新兵器」、メガソーラーでも採用 ランダムに点滅させ、カラスの嫌がる光に【日経テクノロジーオンライン2017年8月26日】

 宮崎県日向市と東臼杵郡門川町にまたがる丘陵に、出力約24.5MWのメガソーラー(大規模太陽光発電所)「日向日知屋太陽光発電所」がある(関連コラム1)。総合建設会社(ゼネコン)大手の大林組が開発し、特定目的会社(SPC)のOCE日向メガソーラー(日向市梶木町)が発電事業者となる。

 このメガソーラーでは、2つのカラス対策が導入されている。丘陵という立地もあり、施工時から、カラスがフェンスにとまることが多かった。中には、石をくわえて飛び、太陽光パネルの上に落とすことがあり、パネルのカバーガラスが割れる被害が相次いだ。

 こうした被害は、国内の多くのメガソーラーに共通した悩みの一つとなっている(図1、関連インタビュー)。太陽光パネルのガラス割れだけでなく、日射計や水道管などにも悪戯し、損傷させる例が知られている(関連コラム2、同コラム3)。


図1●カバーガラスが割られた太陽光パネルの例
北海道のメガソーラーにおける例。大林組の発電所ではない(出所:日経BP)

 日向市のメガソーラーが導入したカラス対策の一つは、テグス(釣り糸)である。

 外周を囲むフェンスの上に、わずかに隙間を空けて張った。カラスがフェンスの上にとまるときに、足にテグスが絡まることを嫌がる効果を狙っている。テグスを張ったフェンスの上には、カラスがとまることは見られなくなった。

 もう一つの対策として、アレイ(太陽光パネルを架台に固定する単位)の上に向けて、カラスが嫌がるように光を発する機器を取り付けた(図2)。


図2●日向市のメガソーラーに設置された機器
東神電気製(出所:日経BP)

 アレイの高部に、この光を発するLEDライトを設置している。日中、定期的にさまざまなパターンの光を、カラスが嫌がるようにアレイ上空に向けて発する。

 この機器は、専用の太陽光パネルを備えており、専用の外部電源は要らない。小型・軽量で、場所を取らずに架台の隅に簡単に取り付けられる。

 元々、電柱での活用を想定して開発されたカラスの営巣防止装置を、太陽光発電所で活用することにした。導入したのは、東神電気(大阪市淀川区)製の「ビー・ビー・フラッシュ」で、2種類を10カ所に設置している。

 大林組によると、日向市のメガソーラーに設置した目的は、この発電所における効果を確かめるためという。設置した2種類のうち、1種類は既存の製品(第2世代品)、もう1種類は、東神電気が開発中の新製品(第3世代品)で、フィールドテストに協力している。

大林組が4カ所の太陽光発電所に設置

 大林組が開発・運営している太陽光発電所は、28カ所・40発電所に達し、合計出力は約129MWとなっている。カラスによるパネルの割れに悩まされる発電所もある。

 最初にこの装置を導入したのは、山口県岩国市周東町にある合計出力約2.2MWだった。ここではまず、東神電気から支給された約10個を設置し、効果を検証した。

 また、群馬県太田市新田市野倉町の同約2.3MWにも導入した。この発電所では、2013年11月に売電を開始して以降、約3カ月間で約70枚のパネルが、カラスが石を落としてカバーガラスの割れる被害を受けていた。

 太田市の発電所では、カラス対策として、さまざまな案を検討した。中には、タカを使った退治も含まれていたという。最終的にテグスの設置を採用したものの、対策を施してから1年ほど経つと、テグスが切れたことから、被害が再び増えてきた。

 そこで、新たな対策を検討し、周東町で効果のあった東神電気の装置を採用した。その背景には、テグスによる対策が長期的に通用した場合でも、その後、開発が決まっていた大規模な太陽光発電所では、設置や補修の手間が膨大になることが予想され、より効率的な対策を採用しておきたい意向もあった。

 太田市の発電所では、2015年11月に東神電気の装置を30台設置した。設置後も被害はゼロにはなっていないが、年間10枚程度に大幅に減ったとしている。

 神戸市西区・北区の約9.7MWのサイトでも、カラスの落石によるカバーガラス割れの被害が多かった。そこで、発電所内で、特に被害の多い区域に、まず15個を設置して効果を検証し、一定以上の効果を確認できたことから、発電所全体に60個を設置した。

 現在、これらの4カ所(岩国市周東町、太田市新田市野倉町、神戸市西区・北区、検証中の日向市・門川町)に導入しているほか、カラスによる被害が少なくない他の発電所でも、今後の状況によっては設置を検討していく。

電柱向けに営巣防止装置を開発

 東神電気は、電力や鉄道、電信などの架線関連部材を手掛ける企業である。この一環として、架線周辺にカラスが巣を作ってしまうことで生じるトラブルを防ぐための営巣対策に取り組んできた。

 大林組が採用した装置は、2010年に開発が始まった。電力会社の送電線を支える電柱への営巣を防ぐ目的だった(図3)。


図3●電柱への設置例
カラスによる営巣を防ぐ目的で開発した(出所:東神電気)

 カラスは、さまざまなものを使って営巣する。衣類用のハンガーといった金属部材まで使われ、これが近くの電線に接触することなどによって、電線が地絡する恐れがある。こうした事故を効率的に防ぎたいという、電力会社の要望に応える対策の一つだった。

 カラスの営巣は、ほぼ2月〜5月の間に限られる。カラスの営巣に向く電柱では毎年のように巣が作られる。電力会社では、営巣を発見次第、電柱に登って撤去している。カラスが営巣を諦めるような対策を実現できれば、こうした作業を少なくできる。もちろん、周辺の環境や生物、人間に悪影響を及ぼすような手法は採用できない。

 光を使った鳥への対策は、航空機などで先例があった。航空機では、エンジンに鳥が吸い込まれるバードストライクによる事故が知られている。この対策として、強い光を点滅させることで、鳥が近づきにくくなる手法が講じられている。

 同社では、この手法を応用し、LEDによるフラッシュ光を発し、カラスが嫌がる効果によって、営巣されにくくする装置を開発することにした。

 設置する場所は電柱のため、外部電源には頼れない。また、小型で軽いことが望ましい。カラスの営巣活動は、日中のみのため、光らせるのは日中だけで良い。

 そこで、太陽光パネルと電気二重層コンデンサ(キャパシタ)を組み合わせた電源で、外部電源なしで自立的に稼働する構成とした。太陽光発電電力をキャパシタに貯め、日中の発光に使う(図4)。


図4●日中に自立電源で発光
カラスの営巣は日中の活動のため、夜間は発光しない(出所:東神電気、一部、日経BPが加工)

 外形寸法を小さくするためには、稼働時の消費電力を抑える必要がある。また、上空を飛んでいるカラスがターゲットになるため、フラッシュ光は上向きに発する。

 カラスの営巣時期である2月〜5月前後に電柱に着脱する運用を想定し、2010年に最初の試作機を作製し、電力会社の協力を得て、カラスが営巣しやすい2カ所の電柱に試験的に設置した。その結果、営巣はゼロになり、有効性を確認できた。

 次の2011年には、フラッシュ光を発する角度や、LEDの発光色を変えた試作機を作り、同じように試験した。12カ所の電柱を対象とし、設置後は営巣がゼロに減った。

 3年目の2012年にも、さらに前年の経験も反映した試作機を、37カ所に設置した。この時には、設置後の営巣はゼロではなく、7カ所となった。この7カ所は、周囲に光を遮るものがあるなど、効果を十分には発揮しきれない場所だったという。

 このような結果から、従来の方式よりも高い効果が得られると評価され、製品化後は電力会社による採用が相次いだという。

カラスが嫌がる光

 フラッシュの光らせ方は、カラスにとって、スズメバチのように見えるように工夫している(図5)。カラスが、強い瞬発性の光や、スズメバチの動きのようにランダムに変化する光を苦手とする性質を利用する。


図5●ランダムに発光
カラスが嫌がり、かつ慣れにくいように発光(出所:東神電気)

 光源には、さまざまなLEDを実際に使って検証し、カラスに対して効果の高かった製品を採用している。

 光を発するタイミングと強弱もポイントという。タイミングや強弱を変えながら発することで、カラスを警戒させ続け、慣れさせないようにしている。

 日射量によっても、発光を変えている。これは、太陽光発電電力の出力変化によってキャパシタ内の蓄電量が変わることへの対応という。消費電力にも配慮しながら制御する。

 これらは、内蔵のマイコンで自動制御している。

 「ランダムな発光」を支えるLEDは、第1世代品の1個から、第2世代品では2個に増やし、カラスがより慣れにくく、より効果の高い発光を実現できるとする。大林組の日向市の発電所で実証中の第3世代品では、さらに4個に増やしている(図6)。


図6●第2世代品(上)と第3世代品(下)
外観は丸く、LEDは2個から4個に増やした。より慣れにくい発光を実現(出所:日経BP)

 今後、発売する第3世代品は、樹脂製の筺体も大幅に変えた。第2世代品までは、営巣期の前後に着脱することを想定した製品だったのに対して、第3世代品は、着脱の手間を省いて装着し続けることを想定したためとしている。強度や耐久性、耐湿性などの向上を目指した。

 寿命は、設置環境によって異なるが、4〜5年としている。キャパシタの寿命による。

 小型・軽量で、かつ、取り付けやすい構造とし、電柱や架台に設置しやすいことも特徴という(図7)。第2世代品で、外形寸法は一般的なスマートフォンより少し大きい程度(130mm×100mm×45mm)で、重量は約250gとなっている。


図7●簡単かつ強固に固定できる
電柱の設置環境の制約への対応が、太陽光発電所での採用にも生きた(出所:東神電気)

目安は直径50mごとに1台

 東神電気では、カラス営巣防止装置が実現する効果を「忌避効果」と呼ぶ。あくまで、近寄りにくくする効果で、「絶対に近づけない」、「駆除」ではないとしている。

 太陽光発電所の場合、山間部など元々、カラスの生活拠点やその周辺に開発される場合も多い。こうした場合、とくに「絶対に近づけない」対策は難しい。

 電柱であれば、営巣される数を減らせるかどうか、太陽光発電所であれば、石を落して割られるパネルの枚数を減らせるかどうかで評価してほしいとする。

 「パネル上にフンを落とされない」といった効果までは、未知数としている。太陽光発電所の例では、カラスがフラッシュ光を嫌った結果、LEDの上を狙ってフンをしたり、コケや草の株を被せて置くなどの“反撃”を受けたこともあるようだ。

 第3世代品が、丸みを帯びた外観としている1つには、こうしたカラスの行動への対処もあるという。

 一般的な太陽光発電所への設置の目安として、直径50mごとに1台、出力1MWあたり10台を推奨している(図8)。太陽光発電所の土地の形状やパネルの配置、設置角などによって、この目安は変わってくる。


図8●太陽光発電所における設置間隔の目安
直径50mごとに1台、出力1MWあたり10台が目安となる。大林組の発電所における結果から推奨(出所:東神電気)

 実際に電柱だけでなく、太陽光発電所への採用も増えている。製品化当初は約300台の販売実績のすべてが電力会社向けだったのに対して、第1・2世代品は合計販売台数の約1800台のうち、電柱向けと太陽光発電向けで半々程度になっているとしている。

 太陽光発電所向けでは、大林組のメガソーラーのほか、他の発電事業者による三重県や山口県、福岡県の発電所にも、納入実績がある。
http://techon.nikkeibp.co.jp/atcl/feature/15/389489/082400013/
http://techon.nikkeibp.co.jp/atcl/feature/15/389489/082400013/?P=2
http://techon.nikkeibp.co.jp/atcl/feature/15/389489/082400013/?P=3
http://techon.nikkeibp.co.jp/atcl/feature/15/389489/082400013/?P=4
http://techon.nikkeibp.co.jp/atcl/feature/15/389489/082400013/?P=5

http://archive.is/4lFbT
http://archive.is/cfKps
http://archive.is/0tKdt
http://archive.is/q9JDw
http://archive.is/te3EU
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posted by BNJ at 11:41 | Comment(0) | 野鳥ニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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