2017年08月26日

鳥に一切興味のなかった僕が、なぜか「鳥類学者」になったワケ 鳥の研究は毒にも薬にもならないけれど【日刊ゲンダイ2017年8月26日】

抱腹絶倒のサイエンス本『鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。』がメガヒットを更新中だ。命がけでジャングルに分け入ったり、<エア鳥類学>なるもので架空の鳥を探してみたり…知られざる鳥類学者の日常は文句なしの面白さだ。しかし著者の川上和人氏は実は動物が苦手、犬も虫も得意ではないという、そんな川上さん、なぜ鳥に目覚めたのか?その理由を聞いた。

鳥類学者は肉体仕事?

―小笠原諸島でのフィールドワークを中心に活動する現役鳥類学者が綴る、研究と考察の日常。思わず目を留める挑戦的なタイトルで注目を集めています。

僕がつけました。鳥が嫌いだとはひと言も言っていないんですが、発売以降、「鳥嫌いだったんですか」と思われている節はありますね(笑)。でも実際、大学に入るまで、僕は鳥に一切興味がありませんでした。

たまたま野生動物を調査するサークルに入ったことで興味を持ち、それが研究につながり、就職につながり、ついにこういう本を書くに至ったんです。

鳥が好き、鳥になりたいという人はいても、僕らの分野はぶっちゃけ、お金になりません。同じ生物学でも、今話題のヒアリとか、農業被害をもたらす昆虫の研究であれば、支援してくれる人の数は圧倒的ですが、鳥の研究は毒にも薬にもならないことが多い。だから、研究者を増やしたくても、就職口といった具体的な受け皿がないんです。

でも注目が集まり、興味を持つ人が増えれば、大学に研究室ができ、ポストが増えますよね。だからまず裾野を広げる意味で、鳥の研究の面白さを知ってもらおうと。一般向けの書籍を書いたいちばんの理由はそこです。

―実際、その日々がこんなにハードなものだとは知りませんでした。希少な鳥の情報を得るために孤島の断崖絶壁を登り、命がけでジャングルに分け入る。途中、ハエの大群に襲われたり、吸血カラスに狙われたり……。

サメじゃないだけマシでしたね(笑)。書いたことはすべて事実で、誇張はなし。僕は年間、3〜4ヵ月はこうした出張に出ていますが、もちろん、鳥類学者の誰もがこのような状況にあるというわけではありません。

鳥って、すごく調査がしやすい生物なんです。昼行性だし、目立つ場所にいるし、空を飛ぶので世界中、どこにでもいる。駅前に集まるムクドリとか、庭に来るメジロなどでも、研究は可能です。

そうした中で僕らは、お金をもらって研究している立場ですから、小笠原のようにアプローチがしにくい場所は、プロとして責任を持って担当しなくてはならない。行きたい場所は他にもいろいろありますが、それに対して研究者の数が足りていないのが現状です。

ニワトリも元は外来種

―アニメや特撮、文学や歴史まで、さまざまな比喩や見立てを盛り込んだ筆致は軽妙かつ洒脱。とくに、中盤の一章で展開する「森永チョコボール」のキャラクター・キョロちゃんを巡る〈エア鳥類学〉は圧巻で、肉食説や樹上説など、大いに笑わせてもらいました。

普段書いている論文では、とにかく「インクあたりの情報量を最大にする」のが大事。余計なことを書かないというのは大原則です。でも僕らは、あのキョロちゃんを見ると、本当にこういうことを考えてしまうんです。

たとえば、映画『キングコング』を観て、あんな巨大な猿がいるわけはないと否定するのは簡単だし、それはそれで正しい。ですが、逆にそうした野生の生物に出会ってしまったら、その現象を解釈するのが生物学者の仕事です。

どういう条件が備わっていれば存在が可能なのか、進化しうるのか……そう考えるほうが面白いし、ひとつの思考実験であり、生物学の訓練でもあるんじゃないかと。また、そういうクセをつけておくことで、僕らとしては勉強になるし、研究もより楽しくできるように思えます。

喫緊の課題は「外来生物の増加」

―最終章には、鳥類学者としての川上さんの歩みが記されています。かなり独自の進歩を遂げられたのですね。

先にも述べたとおり、子どもの頃から鳥が好きだったわけではないので、そのぶん「なぜこの鳥が面白いのか」「どういう研究が必要か」と客観的に見られたのではないかと思います。

無人島での研究をやるのも、やれる人間がやらなくては研究が進まないと思うから。いろんな人にお誘いをいただいて、それを受け身でやってきた人生でしたが、幸い、それがうまくいったのかもしれません。

―鳥類学者として今、もっとも重要だと認識される課題は何ですか。

やはり、外来生物の増加ですね。この問題の核心部を、多くの方々にもっと知っていただきたいと思っています。

実は、日本においてはコメもニワトリも外来生物。外来生物がすべて悪ということになったら、僕らはごはんも鶏肉も食べられません。しかし、生態系に悪影響を与える侵略的外来種の存在はやはりやっかいで、解決しなくてはならない。それに、日本の固有の鳥というのは、日本人が保全をしないと、いつかは絶滅してしまうものですから。

―本にも、固有種を含め多様な生物を保全するのは、それが〈人類の財産であり守るのが国民の責務だから〉と書かれています。

はい。ただ、昔は「外来生物=悪」「駆除しなければ」の一辺倒でしたが、今、僕たちは、単純な勧善懲悪ではなく、最善の方法を探るという、もう一段上の議論を皆でする時期に来ている。それは、キングコングを否定するのではなく、「もし本当にいたら」と思考をめぐらすことにも通じていて、そうすることで、大切なことが見えてくるんじゃないでしょうか。

でも……動物学者だから動物が好きだろうと思われがちなんですが、実はあんまり得意じゃない。虫は大嫌いだし、犬とかも苦手で。いちばん好きなのは、そうだなぁ、人間の女性ですかね(笑)。

(取材・文/大谷道子)


『週刊現代』2017年9月2日号より

http://gendai.ismedia.jp/articles/-/52642
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/52642?page=2

http://archive.is/43PE8
http://archive.is/Gtagt

(書評)『鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。』 川上和人〈著〉【朝日新聞デジタル2017年6月18日】
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本よみうり堂 評・稲泉連(ノンフィクションライター)『鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。』 川上和人著【読売新聞2017年6月5日】
鳥類学者だからって鳥が好きとは限らない 研究者が最高に楽しめる本を書いた!【東洋経済オンライン2017年4月22日】

鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。
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posted by BNJ at 11:57 | Comment(0) | 野鳥ニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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