2017年09月23日

カモのペニス、ライバルがいると長くなると判明 発達が遅れる種も、社会環境が生殖器の成長に影響する珍しい例【ナショナルジオグラフィック日本版ニュース2017年9月23日】

アカオタテガモ(Oxyura jamaicensis)のオスは、体の長さに匹敵する巨大なペニスを持っている。(PHOTOGRAPH BY MARESA PRYOR, NATIONAL GEOGRAPHIC CREATIVE)
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 生物学者のパトリシア・ブレナン氏は屋外の大きな鳥小屋を歩いている。彼女は1羽のカモを網で捕まえると、あおむけにして腹部に圧を加えた。「どこを押せばいいかわかっていれば、ペニスを飛び出させることができます」とブレナン氏は説明する。「彼らはとても協力的です。ここにいるオスたちはもう慣れていますから」(参考記事:「男性生殖器に関する5つの研究」)

 米国マサチューセッツ州サウス・ハードリーのマウント・ホリヨーク大学に所属するブレナン氏は、かれこれ10年以上にわたり、こうしてカモに生殖器を出させ続けている。もちろん本人も想像していなかったことだし、それどころか、大学院を出るまで鳥にペニスがあることすら知らなかった。実際、97%の鳥はペニスを持たない。カモは残りの3%に属している。(参考記事:「ヒトのペニスにはトゲがあった?」)

 おまけに、毎年ペニスがあらたに発達を繰り返すという特異な生理機能がカモにはある。繁殖期が始まると大きくなり、繁殖期が終わるとまた小さくなるのだ。さらに、ブレナン氏のチームは、カモたちの社会環境も生殖器の発達に影響を及ぼすことを発見し、9月20日付けの学術誌「The Auk」に論文を発表した。

オスメスのペアと、オスが多い群れ

 無理やりにでもメスに相手をしてもらいたいオスと、気に入らないオスをなるべく避けたいメスとの利害が対立したことで、カモのペニスと膣は互いに逆向きとなるらせん状に進化を遂げた。ブレナン氏はこの事実から、オス同士の競争はペニスに影響を及ぼさないのだろうか、と疑問に思った。

 その答えを探るため、ブレナン氏らは繁殖行動が全く異なるアカオタテガモ(Oxyura jamaicensis)とコスズガモ(Aythya affinis)でペアと群れをつくり、それぞれを自然環境を模した屋外の鳥小屋に入れた。ペアではオスとメスが1対1なのに対し、群れではオスの間に競争が生まれるように、8羽のオスと5羽のメスが入れられた。(参考記事:「ペニスでメスの首刺すネジレバネ、壮絶な繁殖行動」)

 アカオタテガモはつがいを形成しない。そしてほぼ例外なく、オスが強制的に交尾を行う。一方、コスズガモはつがいをつくる習性があり、オスがほかのメスに交尾を強要することは比較的少ない。

 ブレナン氏らの予想通り、群れでライバルのいる鳥小屋に入れられたコスズガモのオスは、ペアにされたオスに比べてペニスを長く発達させた。


アカオタテガモのペニスはらせん状だ。「彼らはかなり協力的です。もう慣れていますから」と、生物学者のパトリシア・ブレナン氏。(PHOTOGRABY BY PATRICIA BRENNAN)
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 一方、アカオタテガモのペニスはそもそも体の長さに匹敵するほど大きい。ブレナン氏はペニスがそれ以上長くなるとは想像できなかった。ある意味、ブレナン氏の予想は的中した。群れのオスのペニスがほかより長くはならなかった。だがしかし、予想外のことも起きた。驚くべきことに、ある時期までほとんどペニスが発達しなかったものがいたのだ。(参考記事:「女性の好みが男性器の進化に影響?」)

強いオスから隠れてこっそりと

 そのわけはこうだ。アカオタテガモの群れには順位制が見られた。そして、上位のオス2羽だけが早くからペニスをゆっくりと発達させ、繁殖期の終わりまで維持し続ける。かたや、上位のオスに太刀打ちできない下位のオスたちは別の戦略をとった。「残りのオスたちは急速にペニスを発達させ、(上位の)オスにひどい目に遭わされる前にこっそり交尾しようとしました」とブレナン氏は話す。下位のオスたちは交尾を終えると、同じく急速にペニスを繁殖不能な状態に戻す。幸運に恵まれれば、ボスの怒りに触れることなく逃げ切れるというわけだ。(参考記事:「小さなオスのスニーカー戦略とは」)

 このように共同生活をさせたことで、2種のカモについて、社会環境がペニスの発達に著しく影響を及ぼすことが明らかになった。社会環境に応じて生殖器を変化させる動物は、ほかには雌雄同体の甲殻類であるフジツボが知られている。フジツボは群れの密度が低い場合、少し離れた個体に届きやすいよう、ペニスを長く発達させる。

 カモがこのようなことができるのは、生殖器を毎年再発達させるという特殊な能力を持つからだと、米国南カリフォルニア大学の生物学者マット・ディーン氏は言う。精巣を年ごとに発達させ、元に戻す脊椎動物は存在するが、ペニスの場合は極めて珍しい。なお、氏はこの研究に関わってはいない。(参考記事:「【動画】優雅で不思議なクリオネの交尾」)

「年ごとに状況が異なる場合、そのような柔軟性は有益です」とディーン氏。「ペニスが必要ないときは、おそらく発達させないのでしょう」。あるいは、少なくともそれほど長く発達させないのだろう。(参考記事:「ハイエナの雌に「ペニス」、雌雄どう判別?」)
http://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/17/092200361/
http://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/17/092200361/?P=2

カモのアレはらせん状!長さを左右する原因は? 米鳥類学会【ハザードラボ2017年9月22日】
ほとんどの鳥類がペニスを持たない一方で、らせん状の長いペニスを持つカモ(写真はアカオタテガモ/P. Brennan/Mount Holyoke College)
 鳥のオスには、生殖器がないことをご存知だろうか?97%の鳥類は、オスがメスの背後から肛門をくっつけ合うことで、精液を送り込んで交尾するが、ペニスを持つ数少ない例外がカモの仲間だ。ワインのコルク抜きのようにらせん状の不思議な形のペニスをもつカモの謎に、米国の大学の研究チームが迫った。

 このユニークな研究は、米マサチューセッツ州マウント・ホリヨーク大学の研究チームが、米鳥類学会が発行する『The Auk〜鳥類学の進歩』に最近発表したもの。パトリシア・ブレナンさんらの研究チームは、欧米に広く分布する「アカオタテガモ」と、日本にも飛来する「コスズガモ」のヒナを対象に、ペニスのサイズが異なる謎に挑戦した。

 2種類のカモはいずれも伸び縮みするらせん状の生殖器を持っているが、アカオタテガモの方が長く、コスズガモは短い。この違いは、決まった相手とペアになるコスズガモと、つがいを作らないアカオタテガモの習性と関係があるとみたチームは、それぞれのヒナを、オスとメスのペア状態と、群れで過ごすチームに分けて2年間飼育した。

 その結果、コスズガモのヒナは、群れで育てた方が平均してペニスが大きくなった。一方で、アカオタテガモのほとんどは、実験開始から2年目経っても性的に成熟しなかった。ようやく生殖可能な段階に達したとき、群れで成長したカモは、ペアで飼育したカモよりもペニスの発達は早かったが、交尾期間はあっという間に終わってしまったという。

 ブレナンさんは「群れの生活は、コスズガモにとっては自分の子孫を残すためにペニスの成長を促し、アカオタテガモは、オス同士の争いを避けるために、戦略的に成長を遅らせたのかもしれない」と述べて、成長過程で経験する生存競争の度合いによって、性的成熟度に大きな影響を及ぼす可能性があると指摘した。

 オスなら(男なら)どんな種でも自分の持ち物のサイズは気になるところだが、このユニークな研究の最大の難問は、ペニスの測定ではなく、飼育そのものだったとブレナンさんは言う。

「実験にあたっては、コネチカット州の水鳥保護施設のプロの手を借りました。野生のカモの飼育って、想像以上にお金と労力がかかるんですよ」と笑いを浮かべるが、そう言わずに、次はカモ以外の動物でもユニークな実験に挑んでもらいたいものだ。
http://www.hazardlab.jp/know/topics/detail/2/2/22012.html

http://archive.is/JC0az
http://archive.is/j7RuD
http://archive.is/zhhrq

posted by BNJ at 11:10 | Comment(0) | 海外の鳥ニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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