2017年09月23日

{知る}生物の「空の羅針盤」探る 計測装置やAI 飛行データ収集、解析【読売新聞2017年9月23日】(オオミズナギドリ)

 海鳥やコウモリはどうやって飛ぶ方向を知り、なぜ目的地まで無事にたどり着けるのか――。生物のナビゲーション能力の秘密を探る研究が盛んだ。計測装置の小型化や解析技術の向上などが追い風になっている。謎は多いが、解明への道筋が見えてきた。(山崎光祥)

■800キロを往復

 新潟県北部の港から高速船で約1時間の粟島。西側の断崖では、体長約50センチの海鳥・オオミズナギドリが春から秋にかけて巣を作る。その間、親鳥は時折、約800キロ離れた北海道の釧路沖まで往復していることが、名古屋大の依田憲教授(生物学)らの調査で2008年に分かった。

 オオミズナギドリ数十羽の背に小型の計測装置を付け、数週間分の飛行ルートを記録した結果だった。装置の総重量は約30グラム。小型で軽いGPS(全地球測位システム)やバッテリーを搭載した。

 なぜ釧路沖まで行き来するのか。依田教授は餌のカタクチイワシが関係していると推測する。釧路沖は好漁場でもある。依田教授は「我々が思うほど長距離移動は苦にならないのかもしれない。行き先が餌の多い場所なら割に合うのだろう」と考える。

 解明に向け調査は今も続けている。これまで1日約550キロ移動することや、釧路沖までの往復に4〜11日かかることなど、膨大なデータが集まっている。

 データ解析に威力を発揮しているのが人工知能(AI)だ。共同研究している大阪大の前川卓也准教授(情報科学)らが、大量のデータから法則性などを自動抽出するAI技術「ディープ・ラーニング(深層学習)」を駆使している。

 移動中に鳥たちが何をしているのかも探っている。それが分かれば、移動の目的が見えてくるからだ。前川准教授らは今年、鳥が餌を食べている時だけ動画を撮影する別のAIを開発。鳥の背の計測装置に小型カメラを積み、撮影に挑戦している。動画の分析が進めば、ナビゲーション能力の秘密に迫るヒントが見つかるかもしれない。

■超音波で把握

 たそがれ時の市街地を飛び交う体長約5センチのアブラコウモリは、目が見えない代わりに、口から発した超音波の反響音で、周りの様子や餌の羽虫の位置を把握する。

 同志社大のグループは16年、京都府京田辺市のキャンパス近くに32個のマイクを並べ、コウモリの飛行ルートを調べた。コウモリは飛びながら超音波を発するので、マイクの場所によって超音波を拾う時間に差が生じる。その差を分析することで、コウモリの飛行ルートや羽虫を捕まえた位置を特定できた。

 藤岡慧明特別研究員(生物音響工学)がコンピューターで計算したところ、この飛行ルートで飛ぶと、かなり効率よく獲物を次々と捕まえられることも判明した。羽虫を捕まえる速度は約1秒に1匹というハイペースだった。

 体重が3倍近いユビナガコウモリでも実験した。4匹にマイクをつけて室内に放すと、互いの超音波を混同しないよう周波数を少しずつずらしながら、先頭の1匹の後を他の3匹が飛ぶ様子が観察された。

 今月から、野生のキクガシラコウモリにマイクとGPSを付けて飛ばす研究を始めた。洞窟などのねぐらから超音波が届かない遠くの餌場までの行動を調べる。

■脳の研究も必要

 鳥や動物は、自分が目指す目的地の方向をどうやって知るのか。地磁気や太陽光を手がかりにしているなど様々な可能性が考えられるが、行動の記録だけでは解明できない。

 移動に関わる脳機能を研究する同志社大の高橋晋教授(神経科学)は「鳥や動物が目的地に向かって移動している最中の脳の活動を調べることも必要になる」と話している。

◇自動運転など応用期待

東北大の橋本浩一教授

生物のナビゲーション能力に関する全国規模の研究プロジェクトで代表を務める橋本浩一・東北大教授(ロボット工学)=写真=に、研究の目的や意義を聞いた。

 人や動物にとって、「移動」は最も重要な生命活動の一つだ。最適な経路を選択し、目的地に到達するには、周りの状況や音、においなどを行動に反映する能力が必要になる。近年、カメラやGPSなどの小型化で、動物の行動を記録できるようになったが、行動の狙いや仕組みなどの理解はほとんど進んでいない。

 プロジェクトには、全国の大学などから29グループが参加している。将来、生物の移動を予測・制御できるようになれば、鳥や蚊が媒介する伝染病の拡散防止に役立つし、自動運転車やロボット、ドローンの効率的な制御にも応用できるかもしれない。
http://www.yomiuri.co.jp/osaka/feature/CO022791/20170922-OYTAT50013.html

サイエンスBOX 海鳥目線AIで撮影、阪大など世界初【読売新聞2017年9月29日】
背中にカメラ餌探す動画

 人工知能(AI)が制御する小型カメラを海鳥の背中に取り付け、飛行中に餌を探す様子を動画で撮影することに大阪大と名古屋大の研究グループが成功した。AIを利用して生き物目線の映像を撮影したのは世界初という。

 

オオミズナギドリの背中の小型カメラで撮影した画像。前方左の海上に仲間の鳥が見える(8月28日撮影、前川准教授提供)
オオミズナギドリの背中の小型カメラで撮影した画像。前方左の海上に仲間の鳥が見える(8月28日撮影、前川准教授提供)
 

 グループは、新潟県・粟島に営巣する海鳥のオオミズナギドリ(体長50センチ)の生物ナビゲーション能力について研究している前川卓也・大阪大准教授(情報科学)ら。

 全地球測位システム(GPS)を使ってオオミズナギドリの飛行ルートを調べておき、そのデータをもとに、飛び方の特徴をAIに学習させた。そのAIが制御する小型カメラをオオミズナギドリの背に取り付け、餌を捕ろうとした時にだけ、カメラを起動して撮影するように設定した。

 8月上旬、粟島で営巣中の数羽に取り付け、1か月後に回収。海に飛び込む様子や、海面すれすれを飛ぶ別の鳥が写っていた。仲間と餌の魚を捕っていたとみられる。

 動物にカメラを取り付けての撮影は、バッテリーの問題から撮影時間が限られ、重要な場面を写すのが難しかった。

 前川准教授は「AIなら見たい場面だけを撮影でき、生態の解明に役立つ。性能を高め、クマやペンギンなどでも試したい」と話す。

 佐藤克文・東京大学大気海洋研究所教授(動物行動学)の話「餌を食べる場面が写っていないのが残念だが、研究者が撮りたい場面を効率良く撮影できる。今後の研究が期待できそうだ」
http://www.yomiuri.co.jp/osaka/feature/CO022791/20170929-OYTAT50023.html

http://archive.is/klDHy
http://archive.is/Wrryo

posted by BNJ at 10:49 | Comment(0) | 野鳥ニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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