2017年10月22日

(科学の扉)微小プラごみ、海汚染 魚・鳥の体内に…化学物質の影響、未解明【朝日新聞デジタル2017年10月22日】

 「マイクロプラスチック」と呼ばれる小さなプラスチックごみが世界の海に広がっている。魚や鳥の体内から汚染物質とともに確認され、生態系への影響が心配される。日本周辺の海域は特に多く、対策が求められている。

 身近な魚がプラスチックを食べていた――。

 2015年、東京湾のカタクチイワシを東京農工大の高田秀重教授が調べたところ、64匹のうち49匹から計150個のマイクロプラスチックが見つかった。主に石油由来のポリエチレンやポリプロピレンの破片で、1ミリ以下の大きさが多く、エサのプランクトンと一緒に取り込まれたとみられる。

 マイクロプラスチックは一般的に、大きさが5ミリ以下を指す。海に流れ出たペットボトルなどのプラスチックは、紫外線や波、昼と夜の温度差に海水といった厳しい環境にさらされて劣化し、小さくなる。製品になる前のプラスチックの粒「レジンペレット」や、研磨剤として化粧品などに入っていた「マイクロビーズ」もある。

 魚などの内臓や消化管が傷つくだけではない。心配されるのが化学物質の影響だ。製品にするときに加えられた難燃剤や、海水中に漂うPOPsと呼ばれる分解しにくい汚染物質などが付着している恐れがある。それが体内で吸収、蓄積され、食物連鎖でさらに濃縮される可能性もある。「ムール貝や二枚貝、海鳥や動物プランクトンなどからもマイクロプラスチックが見つかっている」と高田さん。

 綿貫豊・北海道大教授の調査では、ミズナギドリ類の9割ほどの個体の胃からマイクロプラスチックが見つかった。アホウドリ類は5割、カモメ類は2〜3割だった。プラスチックを食べた海鳥からPOPsが検出された例があるが、「消化速度が遅くなり、栄養状態が悪くなるという報告もあるが、差は見られないという研究もあり、まだ影響はよくわかっていない」という。東京農工大と北大は、オオミズナギドリのヒナにマイクロプラスチックを与え、影響を調べる共同研究を始めた。

 人への影響はどうか。高田さんは「今のところ汚染物質の摂取量も少ないので、そういった魚を食べても影響は見られない。ただ、ものすごく量が増えたときに、内分泌系や免疫系に異常をきたさないか、どんなことが起こりうるかを研究している段階」と話す。

 ■年800万トン流出

 マイクロプラスチックは自然界では分解されず、海流にのって世界中に広がり、南極海でも確認されている。九州大の磯辺篤彦教授は「もはやマイクロプラスチックが浮遊していない海はない」と話す。

 世界経済フォーラムの報告書によると、世界のプラスチックの年間生産量は1964年の1500万トンから、2014年には3億1100万トンと20倍以上に増えた。ただ、年約800万トンが海に流れ出ているとされ、報告書は「このままだと、50年までに重量ベースで世界の魚の量を上回る」と警告する。

 環境省の調査でも日本の各海でマイクロプラスチックが見つかっている。特に、日本海北部や東北の太平洋側、九州周辺で多い。陸から海に流れ出たプラスチック量の上位をアジアの国が占めており、東アジア(日本周辺)の海域1平方キロあたりの数は172万個で、世界の27倍の水準だ。磯辺さんは「東アジアは『ホットスポット』になっている。世界で初めに影響が出る海域かもしれない」と話す。

 マイクロプラスチックは海面付近に浮くものだけではない。生物皮膜に覆われると重くなるが、大きさ1ミリ以下は沈みやすいとされ、海底にはさらに多くが堆積(たいせき)しているとみられる。

 ただ、世界では研究者によって調べ方や使う道具が違うこともあり、単純比較しにくいという課題もある。内田圭一・東京海洋大准教授は「研究者同士がデータを共有しやすいよう、調査手法を標準化させようとする動きも出てきた」と話す。

 ■欧米では法規制

 対策はどうか。専門家たちは「とにかく環境中に出さないことが重要」と強調する。いったん海に出てしまうと回収はほぼ不可能だからだ。

 欧米では数年前から対策が動き出した。米国やカナダ、英国などは、化粧品や洗浄剤などへのマイクロビーズの使用禁止を決めた。フランスは、プラスチック製の使い捨て容器や食器の販売を禁止する法律をつくった。欧州連合(EU)は、加盟国にレジ袋削減計画の策定を義務づけ、25年までに1人年40枚まで減らすことを目標にする。

 日本は、日本化粧品工業連合会が会員企業に洗顔料などへのマイクロビーズの自主規制を呼びかけるにとどまり、対策は企業任せになっている。

 海岸でのごみ拾いも有効だという。例えば、海岸で見つけた10グラムのプラスチック片が、0・1ミリグラムのマイクロプラスチックになると10万個に増える計算になる。

 もちろん、それだけでは根本的な解決にはならない。九大の磯辺さんは言う。

 「生きものへの影響は現時点ではわからないが、今から取り組まないとダメージが顕在化したときには手遅れになってしまう。自然界で分解される新素材の開発や、欧米のような法規制などの対策が必要だ」

 (戸田政考)

 ◇「科学の扉」は毎週日曜日に掲載します。次回は「広がる核酸医薬」の予定です。
http://www.asahi.com/articles/DA3S13191910.html

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posted by BNJ at 10:57 | Comment(0) | 野鳥ニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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