2017年10月29日

鹿児島)龍郷・秋名の田袋 渡り鳥も文化も守る水田【朝日新聞デジタル2017年10月29日】

【動画】奄美大島の水田で羽を休める渡り鳥たち=外尾誠撮影

水田でエサを探すセイタカシギ=龍郷町

 奄美大島北部の龍郷町秋名地区は、島の人が「田袋」と呼ぶ水田がまとまった広さで残る唯一の場所。そんな秋名の田袋では毎秋、多くの渡り鳥が南下する途中で羽を休める。「奄美は希少な留鳥の生息地としてだけでなく、渡り鳥の中継地としても重要。特にエサが豊富な水田は大切だ」。そう話す自然写真家の常田守さん(64)と今月、周辺を回った。

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 「雌雄の群れ。格好いいねえ」。常田さんが盛んにシャッターを切ったのが、セイタカシギ。すらりと長いピンク色の脚が特徴で、英名は竹馬を意味する「Stilt」。全長37センチ。黒い羽と白い体のコントラストも美しく、「水辺の貴婦人」とも呼ばれる。環境省レッドリストで「絶滅危惧U類」に分類される絶滅危惧種で、旅鳥だが島で冬を越す個体もいるという。

 人の気配に気づき、「ピッピピピ」と鳴いて飛び去ったタカブシギも絶滅危惧U類。全長20センチで、羽の模様がタカに似ている。ユーラシア大陸北部で繁殖し、冬はアフリカやインド、東南アジアなどで越冬する。

 あぜではエリマキシギが短いくくちばしでエサを探していた。雄の夏羽の首に襟巻き状の美しい飾り羽があるのが名前の由来。繁殖地のユーラシア北部では、雄がその襟を広げたり飛び上がったりして雌を奪い合うという。

 タシギの体は枯れ草や土の保護色で、経験がないと見つけにくい。見た目は地味だが、西行法師の名歌「心なき身にもあはれは知られけり しぎ立つ沢の秋の夕暮」に歌われたのは、この種とされる。体の割に長いくちばしが特徴だ。

 「ピョピョピョ」の3音で鳴きながら飛ぶコアオアシシギと、それより一回り大きいアオアシシギの姿も。お尻を上下に振るイソシギや全長15センチと小さいトウネンも愛らしい様子をみせたが、今回観察できたのは、ほんの一部だという。

 常田さんが周辺で過去に撮影したのは、シギ類だけで約30種。ほかにもチドリやサギ、カモの仲間など多くの渡り鳥が飛来し、国の特別天然記念物コウノトリの姿も確認されている。虫やカエルなど豊富なエサがそろう田袋は島の生き物だけでなく、世界を飛び回る渡り鳥も育む「生物多様性の源」だという。

 田袋はかつて島の各地にあったが、減反政策に伴う畑地への転換や農家の高齢化などでほとんどが消滅。龍郷町によると、秋名地区に残る約40ヘクタールのうち、作付面積は約6ヘクタールにとどまる。

 それでも地元の秋名と幾里の両集落は協力して田袋を守り、豊作を祈る国の重要無形民俗文化財「秋名アラセツ行事」を継承。集落の一部は今春、人と自然のつながりを示す文化景観として、奄美群島国立公園の指定地域に選ばれた。

 島が目指す来夏の世界自然遺産登録は照葉樹の森が対象だが、自然と文化の源となる田袋も次世代に残すべき奄美の遺産だと、常田さんは確信している。(外尾誠)


http://www.asahi.com/articles/ASKBX21T2KBXTLTB001.html

http://archive.is/F6f2E

posted by BNJ at 11:48 | Comment(0) | 野鳥ニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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