2017年10月31日

高田守先生の生き物語り (番外編)なぜ、そう行動した?【毎日新聞2017年10月31日】

イワシの群れの動きも、行動アルゴリズムに従っている
 乗客の少ない電車の中を思い浮かべてほしい。数人しかいない乗客は、座席のどこに座っているだろう? そして、あなたならどこに座るだろうか? きっと、ドアに近い端の席、横にもたれかかる部分のある席に座りたがるはずだ。また、レストランで好きな席に座っていいと言われたら、あまり人がいない場所を選んで座るのではないだろうか。理由は、居心地がよいとか、落ち着くと思ったからだろう。

 人間は複雑な思考を駆使して生きている一方で、ほとんどの行動は、我々が思っている以上に単純な法則(行動アルゴリズム)に従って決められている。例えば先ほどの電車やレストランの例では、「安全そうな場所では、他の個体と一定以上の距離をとる」「頑丈なものの近くを優先する」という行動アルゴリズムに従っているだけだ。さらに、「安全ではない状況では、他の個体との距離を縮める」という行動アルゴリズムを加えれば、お化け屋敷などで、つい体を寄せ合ってしまう行動も説明できる。

 安全な状況でどれくらい他の個体と距離をとるか、危険な状況ではどれくらい距離を縮めるかという値は、生物によって異なる。CGでできた魚や鳥の群れの映像や、人間と同じような行動パターンで動くロボットは、こうした行動アルゴリズムを用いて作られている。

 進化という側面から見ると、危険な状況で群れを作れば自分が死ぬ確率を下げられるし、安全な状況で距離をとる行動には、資源を巡って競合したり干渉されたりするのを避けるという点で利点がある。つまり、生存に有利な行動パターンを実現するために、その状態が心地よいと感じるように進化してきたと考えることができる。注目すべきは、我々が知らず知らずのうちにこの行動アルゴリズムに従い、ほとんど無意識にどう動くかを決めてしまっていることだ。なぜ今、あなたはそうしようと思ったのか? 無意識のうちに決めたことに意識を向けることで、自分の行動の意味に気づくチャンスが生まれる。(動物行動学者・高田守)=次回は11月30日掲載予定

 たかた・まもる 1984年千葉県生まれ。東京農工大農学部卒。英ケンブリッジ大行動生態学研究室留学を経て、東京農工大大学院連合農学研究科博士課程修了。京都大大学院農学研究科特定助教。専門は動物行動学、進化生物学。現在は生き物の家族や社会の研究に携わっている。趣味の「金魚すくい」は毎年全国大会上位の腕前。
https://mainichi.jp/articles/20171030/mog/00m/100/001000d

http://archive.is/xaqOG

posted by BNJ at 11:23 | Comment(0) | 鳥類一般ニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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