2017年12月17日

(科学の扉)古代人のDNAを探る 歯から遺伝情報、現代人と比較可能に【朝日新聞デジタル2017年12月17日】

古代人のゲノムの秘密<グラフィック・田中和>
 何千年も前の地層から掘り出された古代人の骨から、遺伝情報を記録したデオキシリボ核酸(DNA)を直接取り出せるようになってきた。現代を生きる私たちと、どう違うのか。古代のDNAを探る研究が進んでいる。

 私たち現代人は、祖先のDNAを受け継いでいる。そこで細胞中のDNAを調べれば、遺伝学的な関係から、アフリカに生まれた人類が、各地の民族や集団に枝分かれしていく様子を推し量ることができる。

 だが近年、古代人の骨の中に残っているDNAを取りだし、古代人と現代人を直接比べられるようになってきた。しかも遺伝情報の断片ではなく、生命の設計図といわれる「ゲノム(全遺伝情報)」にまで迫る研究が進む。

 国立遺伝学研究所や国立科学博物館、東京大学などの研究チームは昨年、約3千年前の「縄文人」のゲノムの一部の解読に初めて成功したと発表した。

 調べたのは、福島県新地町にある三貫地(さんがんじ)貝塚から1950年代に発掘され、東大総合研究博物館に保管されていた頭蓋骨(ずがいこつ)の歯だ。

 研究チームは現代人のDNAの混入を防ぐため、許可された人しか入れないクリーンルームで作業。歯科用ドリルで歯を削り、DNAシーケンサーという装置で、内側にあった微量の細胞からDNAを読み取った。

 東大の諏訪元(げん)教授(人類学)は「標本の管理者としては、なるべく標本を傷つけたくはない。簡単には調査を許可できないが、DNAの解析で私たちが何者なのか、初めてわかることがある」と話す。

 こうして縄文人を現在の日本人の集団と比べると、北海道の「アイヌ人」に最も近く、次いで沖縄の「琉球人」、本州の「本土日本人」の順で近いことがわかった。

 また、東アジア人の共通祖先がアフリカから東アジアに移り住んだ後、これまで考えられたより古い時期に、独自の集団に分かれて縄文人が生まれた可能性があることもわかってきた。

 国立科学博物館の神澤秀明研究員は「発掘された人骨の骨格や歯を調べる人類学の研究だけではとらえきれなかったことも、DNA解析でわかってきた」と話す。

 ■核に膨大データ

 縄文人のDNA解析にかかわった国立科学博物館の篠田謙一・人類研究部長は「DNAシーケンサーなどのテクノロジーが発展し、どの部分の骨を解析に使うかなどのノウハウも蓄積されたことで、ここ5年くらいで古代人の研究ががらっと変わってきた」と話す。

 今回の研究のポイントは、細胞内にひとつしかない「核」に含まれる「核DNA(ゲノム)」(30億塩基対)を調べられたことだ。

 これまでは古代人のDNAを調べる場合、細胞内でエネルギーをつくっている小器官「ミトコンドリア」に含まれるDNAを調べていた。だが、ミトコンドリアDNAは1万6500塩基対と小さく、得られる情報が限られていた。

 データの量が格段に多い核DNAを調べたことで、読み取ったのが一部とはいえ、これまでの数千倍の遺伝情報を読み取ることができた。さらに、その後、現代人と同じくらいの精度で縄文人のゲノムを詳しく読みとることもできている。また、頭蓋骨の耳周辺の骨にDNAが状態良く保存されている可能性がわかり、研究が進む。

 読み取ったゲノムのデータは膨大になるため、篠田さんは「人類学だけでなく、データ解析や、コンピューターに詳しい人材も研究チームに必要になっている」と話す。

 日本人はいつ、どこから日本列島にやってきたのか。それを知るには、より多くの縄文人のデータを集めたり、縄文時代より昔のDNA分析を進めたりする必要がある。研究チームは、沖縄県石垣市の白保の洞窟で見つかった2万年前の旧石器時代の人骨からも核DNAの分析を試みている。

 ■保存状態が左右

 古代DNAの分析は、どこまでさかのぼれるだろう。

 東大の諏訪さんによると、DNAが取り出せるかどうかは、骨が埋まっていた場所や保存状態に大きく左右される。温度が低い場所や太陽光や空気、水にさらされずに劣化が進まない場所が望ましい。

 また、古いDNAは土壌中の細菌などの影響を受ける。福島の例では、見つかったDNAの塩基配列のほとんどが細菌やほかの動物由来のもので、縄文人のDNAは約1%しかなかったという。

 それでも、とても古いDNAについての論文が発表されることがある。米国の研究者が1994年、白亜紀の約8千万年前の化石から「恐竜のDNA」を見つけたと米科学誌サイエンスで発表した。その1年前に映画が公開されたSF小説「ジュラシック・パーク」が現実のものになるかと話題になった。

 ところが、別の研究者が解析したところ、混入したとみられるヒトのDNAだったことがわかった。恐竜のDNAは長年の間に分解されてしまい、今のところ見つかっていない。

 現時点でヒトでは約43万年前に欧州で見つかった旧人類、哺乳類では約70万年前の古代の馬が核DNAを解析した最古の例と考えられているという。

 (小堀龍之)

 <DNAの寿命> 豪州などの研究者が2012年、絶滅した巨大鳥モアのDNAを調べ、放射性物質のような「半減期」があると英科学誌で発表した。モアのDNAの半減期は521年で、長くとも680万年で壊れると推定した。

 <歯石も研究> 歯の汚れが固まった歯石もネアンデルタール人などの歯から見つかっている。歯石に口内細菌や、羊やキノコなど食べもののDNAが含まれていたことが判明し、古代の食生活を探る研究も近年進んでいる。

 ◇「科学の扉」は毎週日曜日に掲載します。次回は「月の水を探す」の予定です。
http://www.asahi.com/articles/DA3S13277495.html

http://archive.is/h6ywM

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posted by BNJ at 21:08 | Comment(0) | 鳥類一般ニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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