2017年12月21日

美を継ぐ 上村三代 <83>入試の問題はヒヨコ【読売新聞2017年12月21日】

 京都芸大の入試の実技には、「描写」と「色彩」と「立体」がある。例えば、今年度の「描写」では、紙コップ50個を自由に配置し、鉛筆で描写しなさい、という問題が出た。


 「予備校で身につけた小手先の準備では対応できない問題で、どれだけ可能性を秘めているのかを確かめようとしている」と、教授の田島達也は説明する。

 「あまり奇をてらう問題はどやろか」と語る淳之だが、教員時代、「実技の課題は静物」という“常識”を覆す出題をした。

 「ヒヨコを課題にしたらどうですやろ」

 突拍子もない提案に古手の教員は戸惑ったが、用意できるならという条件で受け入れられた。唳禽荘れいきんそうで飼っていたから生態には詳しい。「孵化ふかして3日目くらいが描くのに面白い」と800羽を手配した。

 試験前日、孵化して2日のヒヨコが届いた。暖かくした自宅の部屋で保管し、当日朝、車に積み込もうとしたところ、暖房がききすぎたのか成長が早まり、箱に入りきらない。なんとか積み込んだものの、ヒヨコの体温で汗だくになった。

 大学まで運び、1羽ずつ受験生に配った。受験生が驚いたのは言うまでもない。「約束と違う」と詰め寄る受験生もいたが、淳之は「約束なんかしてへん、と返したもんや」。

 「限られた時間で、息づいている生命をどう表現するかを試したかった」のだが、想定外のこともあった。日当たりのいい教室と、北向きの教室では、ヒヨコの動きが違う。

 「不公平やったかなあ」。淳之はその日のことを思い出して、笑みを浮かべた。(敬称略)
http://www.yomiuri.co.jp/local/kyoto/feature/CO029414/20171220-OYTAT50047.html

http://archive.is/NdDZV
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タグ:ヒヨコ
posted by BNJ at 21:10 | Comment(0) | 鳥類一般ニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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