2018年01月10日

アートを歩く 心に響いた瞬間 永遠に=高知美術研究会・北泰子 /高知【毎日新聞2018年1月10日】(ヤイロチョウ/アオサギ)

 山下隆文写真展「風の聲・森の音2017」が昨年11月から12月に掛けて、香美市土佐山田町のレストランHEATH(ヒース)で開催された。12年の日経ナショナルジオグラフィック写真賞ネイチャー部門最優秀賞を受賞した海の写真をはじめとする近年6〜7年間の高知の海、川、蛍、野鳥をテーマとする代表作が並んだ。ヒースの公文拓さんからの「商業写真ではない写真が欲しい」という要望に応え、引き受けたパウンドケーキなどの写真撮影がきっかけで、4年ぶりの個展が香美市で実現した。レストラン奥の展示スペースとテーブルのある壁面に約30点の作品が並んだ。会場で、山下さんに話を聞いた。

 54年高知市生まれの山下さんは、子どもの頃から森や田んぼ、川で遊んで育った。高校卒業後、地元の企業に就職。20代でカメラを持ち、野鳥の保護活動に参加していた。ちょうどその頃、県内で計画中だったゴルフ場の開発予定地に絶滅危惧種のヤイロチョウの生息情報を聞き、現地で調べてみると、親鳥が巣を作り、ひなを育てていた。多くの人に知らせたいと撮った写真が地元紙に掲載され、ゴルフ場反対の世論が巻き起こり、計画は中止となった。「1枚の写真で、ものごとは動くんだ」。この経験がきっかけで26歳でカメラマンとして独立。プロの道を歩み始めた。

 40代から、写真を教えてほしいという周囲の声に応え、写真教室を始めた。現在は3教室で50人の生徒さんを教えている。自らも仕事をこなしながら、精力的に自然の中での撮影を37年間続けてきた。「自然の良さ、怖さ、いろいろな姿を知ってもらいたい。もっと自然に目を向けて、自然のことを考えてもらいたい」という強い思いが写真に反映されている。20代の頃から仲間と共に続けてきた自然保護活動、環境保全活動には「写真」で貢献してきた。

 高知の海と森、そこで生きる野鳥や蛍にこだわり、自然の見せる一瞬のシャッターチャンスをつかむため、毎年毎年、狙う場所に通い続ける。「台風一過の大波」は高知市甲殿海岸で撮った1枚。台風が去り、灰色の雲の切れ間から現れた太陽の光が、荒れ狂う大波を金色に染めた瞬間をとらえた作品。思わず誰もが息をのむ見事な作品。これが12年に日経ナショナルジオグラフィック写真賞ネイチャー部門最優秀賞を受賞し、世界に認められた写真である。13年5月30日発行のナショナルジオグラフィック日本版には6ページにわたり山下さんの特集が組まれ、感動的な海の写真が、多くの写真ファンを魅了した。「ヒメボタルの乱舞」は、四国山地の1000〜1400メートルの原生林に分け入り、15年間撮影し続けてきた写真の中の1枚。漆黒の闇の中、ヒメボタルの点滅する光が、まるで夜空の銀河のように美しい。「アオサギ」は12月の朝の光線で、仁淀川の岸からテントに入って撮った。水の流れを絵画的に表現したかったという。いずれも「奇跡の1枚」といっても過言ではない作品だ。

 「海はライフワークです。ホタルもまだ撮り切れていません。今後も海と森を撮りながら、自然の声を伝えていきたいと思っています」。自然が好きで、心に響いた瞬間を永遠にしたいとシャッターを切り続ける山下さん。世界に誇る高知の写真家だ!
https://mainichi.jp/articles/20180110/ddl/k39/070/510000c

http://archive.is/NN6Mj

posted by BNJ at 23:25 | Comment(0) | 野鳥ニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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