2018年01月16日

(凄腕つとめにん)山崎徹さん 水族館で組み立てた巨大水槽、30以上【朝日新聞デジタル2018年1月16日】

「水族館大国」の日本だけでなく、海外での仕事も多い。経験した30以上の現場のほぼ半数が中国やタイ、デンマークといった海外の水族館だ=栃木県佐野市、倉田貴志撮影

 ■シンシ 北関東工場製造部課長(41歳)

 サメやマンタといった海の生き物が伸び伸びと泳ぎ回る巨大水槽。集客を競う各地の水族館に欠かせない展示の目玉だ。水族館向けの水槽を手がけるプラスチック板の加工メーカーに入社して22年余り。大きいもので幅20メートル近く、深さ6メートルほどもある水槽の組み立ログイン前の続きてを国内外の現場で担ってきた。

 巨大水槽は透明なアクリル板を貼り合わせてつくる。水圧に耐えられるように分厚く重ねても、高い透明度を保てるアクリル板を使う。おおむね長さ6〜8メートル、幅3メートル、厚さは2〜5センチ。まずは最大で10枚ほどを重ね合わせて厚みを出す。必要なら加熱して曲げる。その後、重ねた板を横に貼り合わせてつなげ、水槽にしていく。

 トレーラーで運べるアクリル板の大きさには限度があるため、横に貼り合わせる作業だけは栃木県佐野市の工場ではできない。設置先の水族館に出向いて仕上げる。工場で成形した分厚い板をクレーンで並べ、家具の転倒防止器具のようなもので固定する。板と板の間は3ミリ空け、隙間に特殊な接着剤を流し込んで化学反応を起こす「重合接着」という手法で一体化させる。

 アクリル板は、周りの気温の変化に応じて大きさや形が変わる。工場や設置場所の気温はエアコンなどで一定に保つが、輸送中の外気温の変化に影響されたり、自重でたわんだりして変形する。接着面にわずかでも凹凸があると化学反応にむらが生じ、目障りな気泡のようなものができたりして「失敗作」になる。来館者が板の継ぎ目に気づかないほどきれいに仕上げるには、板と板の間隔を、どこをとってもきっちり3ミリにそろえないといけない。

 背丈の数倍もある板の左右の端を上から下まで、足場に乗ったりもしながらこまめに物差しをあてる。ボールペンで付けた「削りしろ」の印に従って、電気カンナや「スクレーパー」と呼ばれる金属製の道具、電動ヤスリを駆使し、手作業で接着面を平らに整えていく。板の表と裏につけるボールペンの印はあくまで参考程度。数十センチもの厚さがある板の断面が完全に平らになっているかを目で確かめながら削るしかない。わずかな出っ張りをミリ単位の精度で微調整する力加減は、長年の経験で磨いたカンだけが頼りだ。

 水槽の施工を手がける菱晃(りょうこう)(本社・東京)で、現場の作業を統括する千葉清さんは「手仕事の正確さが抜きんでている。周りの部下の様子もよく見ていて的確な指示を出す。山崎さんがいる現場は安心」と厚い信頼を寄せる。

 水族館のメインの水槽は大型化が進むとともに、曲面など複雑なデザインを取り入れる傾向が強まっている。下から見上げると、水槽越しに見えるビル群を背景に泳ぐペンギンが宙を舞うように感じられるサンシャイン水族館(東京)の「天空のペンギン」、長さ20メートルほどの海中トンネルを散歩するような感覚が味わえるアクアパーク品川(同)の「ワンダーチューブ」……。最近の代表作も曲面のデザインが特徴的だ。「四角い板をきれいに接着するのも簡単ではありませんが、カーブがある板はさらに高い技術が求められる。挑戦しがいがあります」(庄司将晃)

 <プロフィル>

 やまざき・とおる 栃木県足利市出身。足利工業大付属高卒。アクリルの加工や水族館に興味はなかったが、「たまたま学校の先生に薦められて」1995年にシンシに入社した。2015年から現職。

 ◇凄腕のひみつ

 ■手作りの道具が大活躍

 アクリル板を削って形を整えたり、板に混入した異物を取り除いたりと大活躍するスクレーパー。金属を切るのこぎりの刃を、砥石(といし)でスケート靴のエッジ状に加工した手作りの道具だ。

 ■微細なキズも見逃さず

 アクリル板の表面についたキズを、紙ヤスリなどでならしてきれいに仕上げるのも大事な仕事だ。大きな板をすみずみまでチェックし、1ミリ以下のキズまで見つけ出す。仕事柄、マイカーに小石が当たってできるごく小さなキズまで目に飛び込んでくるようになった。「見なくていいものまで見えちゃう。気になって仕方がないんですよ」

 ■情報・ご意見はファクス(03・5541・8428)またはメールで(t-rodo@asahi.comメールする)

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 凄腕(スゴウデ)つとめにん
https://www.asahi.com/articles/DA3S13314642.html

http://archive.is/MavZy

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