2018年01月24日

(評・美術)「国宝 雪松図と花鳥」展 17メートルの図巻、意義ある全公開【朝日新聞デジタル2018年1月24日】(鳥類真写図巻)

鳥類真写図巻(部分)=18世紀、渡辺始興筆
 東京・日本橋の三井記念美術館では毎年、正月をはさんで円山応挙の国宝「雪松図屏風(びょうぶ)」を公開しているのだが、リピーターをつかむためには、他に何を陳列するかの工夫がいる。今年は花鳥をテーマとした。

 この美術館の第1室は工芸専用の独立ケースが並ぶので、花鳥文様のある工芸品を展示するだろうと思っログイン前の続きたが、そのとおり。花入(はないれ)や香合、棗(なつめ)が並ぶなか、思わず見入ったのは楽道入(らくどうにゅう)の「赤楽茶碗(ちゃわん)」(重要文化財)だ。赤い茶碗の胴の一部に刷毛(はけ)塗りされた黒い景色が暗雲のように垂れ込めている。銘は「鵺(ぬえ)」。京の都に現れたという伝説上の怪鳥だ。これもまあ鳥だろう。学芸員のウィットに感心した。

 雪松図の展示された第4室は見応えがある。中国・清朝の画家・沈南蘋(しんなんぴん)の花鳥図6幅は壮観だし、18世紀前半に活躍した渡辺始興(しこう)の「鳥類真写図巻」=写真(部分)=の全巻公開はうれしい。図巻は17メートル余りと長いため、たいていは一部しか公開されず欲求不満がたまりやすいのだ。狩野探幽、尾形光琳の鳥獣類を写生した図巻の模写・写生の系譜の延長線上にあり、応挙へ続く美術史上重要なもので全巻公開の意義は高い。

 ところで、この図巻を寄贈された新町三井家の三井高逐(たかなる)氏(1896〜1986)が鶏の研究者であったため、これを収集し愛蔵されたというエピソードは興味深い。というのも三井家といえば、応挙のパトロンとしても有名であり、北三井家の高福(たかよし)氏(1808〜85)に至っては、本格的な絵師と見まごうばかりの絵をたくさん残している。本展でも第7室には同氏による「海辺群鶴図屏風」他の絵が陳列してある。文化に深い理解を示す歴代の三井家のあり方に感心するのだ。現代の企業家もぜひ見習ってほしい。

 その他、円山四条派の国井応文の「百鳥図(ひゃくちょうず)横額」はなかなかの力作であったし、永楽妙全の「仁清写色絵雉子香炉(にんせいうつしいろえきじこうろ)(雄・雌)」には、仁清作がある金沢の石川県立美術館へ久々に行ってみるかという旅情に誘われた。

 館蔵品のみの展示としていささか侮って出かけたのだが、三井家の底力に返り討ちに遭い、館を出た。(安村敏信・美術史家)

 ▽2月4日まで。28日休み。
https://www.asahi.com/articles/DA3S13326944.html

http://archive.is/MM3Xl

タグ:鳥類美術
posted by BNJ at 11:18 | Comment(0) | 野鳥ニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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