2018年04月01日

【クローズアップ科学】動物に小型装置、進化する「バイオロギング」 生態解明に威力、環境も把握【産経ニュース2018年4月1日】

装置を載せて飛んでいけ

 野生動物に小型の記録装置を取り付けて行動を調べる「バイオロギング」という研究手法が次々と成果を生み出している。ユニークな餌の捕り方や泳ぎ方などこれまで追跡できなかった生態の謎が明らかになり、環境データを集める手段としての活用も進む。(原田成樹)

 小型化で利用拡大

 バイオロギングは、生物(バイオ)の記録(ログ)を取得するという意味の造語。1980年ごろに研究が始まったが、当初は取り付ける装置の重さが約1キロもあったため、対象はアザラシやウミガメなどの大型動物に限られていた。

 2000年ごろからデジタル技術で装置の小型化が進み10グラム程度に軽量化。鳥にも装着可能になったほか、衛星利用測位システム(GPS)の受信機やカメラ、流速計、加速度計などで多様なデータが得られるようになった。

 装置が重すぎると動物に負担がかかって本来の行動ができなくなり、倫理的な問題も生じる。このため重さは体重の3〜5%程度にとどめ、装置の形状も抵抗が小さくなるように工夫するという。

 立ち泳ぎする鯨

 東京大大気海洋研究所の佐藤克文教授らは17年、東南アジアのタイ湾でカツオクジラの背中にカメラを装着。尾びれを振って立ち泳ぎしながら水面で口を上向きに開け、入ってきた小魚を食べていることを発見した。カツオクジラは通常、口を開けて小魚に突進するが、タイ湾は小魚が水面にしかいない特殊な環境のため、独特の捕り方を会得したと考えられている。

 国立極地研究所の渡辺佑基准教授は15年、絶滅危惧種のヒラシュモクザメが体を斜め60度に傾けて泳ぐことを、背びれに付けたカメラの映像から発見した。サメは浮袋がなく、通常は胸びれを飛行機の翼のように広げて揚力を得る。これに対しヒラシュモクザメは、体を傾けることで長い背びれを胸びれのように使い、効率よく揚力を得ているとみられ、模型による実験でその効果を確かめた。

 ペンギンの生態をビデオカメラで撮影すると、数時間で電池が切れてしまう。そこで渡辺氏は、少ない消費電力で体の動きを記録できる加速度計を一緒に装着。両方のデータを突き合わせることで餌をとるときの体の動きが分かり、加速度計だけで捕食行動を推定できるようにした。

 この方法でアデリーペンギンが巣を出てから戻ってくるまで1日以上にわたり追跡し、食生活を詳しく解明。海洋生物が水中で何をどれだけ食べているか分かったのは初めてという。

 鳥で風を観測

 バイオロギングは地球環境のデータを収集する新たな手法としても注目されている。例えばウミガメは甲羅に装置を乗せやすく、呼吸のたびに水面に上昇するので、海水温などのデータを定期的に衛星に送信することが可能だ。

 佐藤氏らは宇宙航空研究開発機構(JAXA)と共同で、鳥用のフライトレコーダーを使い、アホウドリの仲間のオオミズナギドリが風に乗ってグライダーのように飛んでいるデータを取得。風向や風速を推定したところ、気象衛星の観測とも矛盾しなかった。1日に数回しか上空を通らない衛星を補完する手法として期待できる。

 一方、日照から緯度と経度を算出して記録する小型装置が開発され、ここ数年で多くの渡り鳥に装着されるようになった。これに着目した渡辺氏は、196種の渡り鳥の公表データを分析した。

 その結果、自力で羽ばたく鳥は重いほど渡りの距離が短くなるが、風を利用して滑空する鳥の距離は体重とは無関係で、多様な渡り鳥の移動をエネルギー消費の観点から単純に説明できることを突き止めた。

 「種による行動の違いではなく、生物を貫く法則が見えてくることに意味がある」と渡辺氏。魚でもマグロやホホジロザメなど体温の高い魚は回遊距離が長いことが分かったという。

 装置がさらに小型化すれば昆虫などへの利用が広がる。生理的な変化を測るセンサーなど多機能化も進むとみられ、渡り鳥がいつ眠っているかを脳波で調べる研究も始まっている。佐藤氏は「遺伝子やタンパク質を調べるように、バイオロギングを生物学で当たり前の道具にしたい」と話す。
https://www.sankei.com/premium/news/180401/prm1804010015-n1.html
https://www.sankei.com/premium/news/180401/prm1804010015-n2.html
https://www.sankei.com/premium/news/180401/prm1804010015-n3.html

http://archive.is/SpuGr
http://archive.is/6gOTO
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posted by BNJ at 11:31 | Comment(0) | 野鳥ニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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