2018年05月14日

水族館の人気者、繁殖に力 国際取引の規制厳しく 【日本経済新聞2018年5月14日】

 水族館が、展示する生き物の健康管理や繁殖に本腰を入れている。ワシントン条約で国際取引が規制され、ペンギンや大型のサメといった人気者の海外からの購入が難しくなっているためだ。日本は世界屈指の水族館の多い国で、全国約120カ所に施設がある。飼育動物を長生きさせ、出生数を増やすには海洋動物に詳しい獣医師など人材の育成も課題だ。

すみだ水族館で誕生したペンギンの赤ちゃん(東京都墨田区)

 すみだ水族館(東京・墨田)で今年4月、マゼランペンギンの赤ちゃんが誕生した。ヒナは順調に育ち、同月27日から展示を始めた。日ごろから繁殖しやすい環境づくりを心がけているという同館では6年連続で計12羽のヒナが生まれている。

 飼育員は手間を惜しまない。メスが繁殖する可能性を採血でチェックしたり、母鳥には体力を付けるためエサを多めに与えたり。「日々の健康管理の積み重ねが繁殖につながっている」(飼育員の中井咲恵さん)。ペンギンは人気が高く、来館者数増にもつながるだけに繁殖にも力が入る。

 悠々と泳ぐ姿が人気のジンベエザメの生態の研究に取り組んでいるのはかごしま水族館(鹿児島市)だ。地元の定置網にかかった幼魚を水槽で飼育し、一定の大きさになると発信器を付けて放流する。「回遊ルートや繁殖場所などの解明につながれば」と佐々木章展示課長は言う。

 ジンベエザメは絶滅が危惧されており、捕獲や繁殖の方法の手がかりを得たいとの期待がある。同館は4月28日から、最新の調査結果の展示を始めた。

 動物たちの健康管理に力を入れる施設もある。山口県下関市立しものせき水族館「海響館」は今春、遺伝子検査装置を導入した。輸入が規制される種が増えることで新しい個体を入れることが難しくなり、展示動物の遺伝子の多様性の確保が難しくなっていることが背景にある。ペンギンなどの適切な交配、病気の予防などに役立てる。

 館内には内視鏡や超音波画像診断装置、レントゲンなど人の病院並みの機器がずらり。「生き物の健康管理の重要性は年々高まっている」(石橋敏章館長)

 そうした課題には、設備の充実だけでは対応できない。水族館でも生き物の診断や投薬は獣医師でないとできないが、海洋動物の専門知識を有した獣医師は少なく、水族館に常駐できる人材が不足しているのだ。

 一般に獣医師を目指す若者は獣医学部、魚が好きな人は水産学部に進学する傾向がある。獣医学部でも海洋動物について学ぶ機会はあるが、座学が中心で内容は必ずしも十分ではない。

 そこで鹿児島大は今年度から、水産学部と獣医学部が連携して海洋動物に強い獣医師の育成を始めた。獣医学部の学生でも希望者は水産学を履修し、水産業の現場で実習を受けたり、魚の研究に参加したりすることができる。国内の大学では初の試みという。

 越塩俊介水産学部長は「水族館の生き物の健康管理はもちろん、アジア全体で養殖が盛んになる中、魚を診断し治療できる獣医師の活躍の場は増えている。学部の壁を越えた連携で水産分野に強い医師を輩出していきたい」と話している。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO30448570U8A510C1CC0000/

http://archive.is/4NHXo

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