2018年05月23日

世界遺産に認められなかった「奄美・沖縄」 初の敗北、環境省はどうする?【産経ニュース2018年5月23日】

 希少生物の宝庫と言われる「奄美大島、徳之島、沖縄島北部および西表島」(鹿児島県、沖縄県)について、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界自然遺産への登録可否を審査する諮問機関「国際自然保護連合」(IUCN)が5月3日、審査を先送りする「登録延期」を勧告した。過去、推薦した区域がすべて一発で「登録」勧告を受けてきた環境省だけに、担当職員は「甘かったと言われても仕方ない」と唇を噛む。“誤算”はどこにあったのか。(社会部 市岡豊大)

言われてみれば…

 「推薦区域が歪(いびつ)な形になってしまった。IUCNは全体のまとまりや『美しさ』を重視したのだろう。言われてみれば『何でこんな形に』と思う区域はある」。担当職員は5月4日未明、苦々しい表情でつぶやいた。

 同じ3日には世界文化遺産へ推薦された「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」(長崎県、熊本県)について、ユネスコ諮問機関「国際記念物遺跡会議(イコモス)」が登録を勧告。抜本的見直しを突きつけられた形の「奄美・沖縄」と明暗を分けた。

 6月24日から7月4日にバーレーンの首都、マナマで開かれるユネスコ世界遺産委員会で正式決定されるが、「奄美・沖縄」の今年の登録は厳しそうだ。

 奄美大島など4島を含む南西諸島は1千万年以上前はユーラシア大陸の東端に位置したが、約200万年前までに地球の表面を覆う岩盤(プレート)の移動や気候変動に伴う海面上昇で大陸から分離され、同じ種だった生物は島の環境によって独自に進化した。

 平成15年、環境省は世界自然遺産の候補地に「知床」(北海道)「小笠原諸島」(東京都)「奄美・沖縄」の3地域を選定。生物保護の前提となる国立公園にすでに指定されていた「知床」(17年登録)や「小笠原諸島」(23年登録)と異なり、「奄美・沖縄」は西表島の一部以外は「ゼロからのスタート」(環境省)。林業組合など集落ごとに地元と丁寧な話し合いを重ね、全島が国立公園に指定されるまで10年以上かかったという。

 他にも課題があった。外来種の排除だ。昭和50年代、猛毒蛇ハブ退治のため奄美大島に持ち込まれた南アジア原産のマングースが繁殖し、在来種の貴重なネズミなどを捕食。17年度に特定外来生物に指定されて以降、マングース駆除に時間を費やした。

元米軍用地に光明

 こうした経緯で、15年以来、15年間かけてIUCNへの推薦に至った「奄美・沖縄」。環境省が初めて敗北を喫したのはなぜか。

 IUCN勧告は、評価基準の1つ「独自の生物進化がみられる」について、具体的区域には触れず、「(区域が)完全性の要件に合致しない」と否定したという。同省は「推薦区域が大きく離れているところもあるなど、きちんと説明できていなかった」と「説明不十分」を敗北理由にあげる。

 また、2つ目の基準「生物多様性の保全上重要な地域」についてIUCNは、沖縄島北部にある元米軍用地の編入を登録勧告を出す条件として掲げた。これに対して同省は、推薦区域を修正して元米軍用地を組み入れれば「基準に合致する可能性がある」と光明を見い出す。同区域は今夏にも国立公園へ編入するめどが立っており、来年には推薦区域に編入できる。

 候補選定から世界自然遺産登録の仕事に携わる同省自然環境計画課の奥田直久課長は4日未明に開いた記者会見で、「感触でしかないが、見直せば合致すると言ってくれたようにも思える」と説明した。

ライバルは国内にも

 記者会見で「戦略が間違っていたのでは」と問われた奥田課長は「IUCNの委員は毎年同じ人物ではない。世界的に見れば、これまで(同省の推薦通り)評価されてきたのが特別だった。結果に一喜一憂することはない」と答えた。

 “逆転”登録を目指すか、推薦を取り下げるか−。中川雅治環境相は8日、「現在の内容で登録を得ることは極めて難しい」との認識を示した。

 来年2月に決まる推薦枠を狙う場合、日本国内の他の遺産もライバルとなる。今年までは自然遺産と文化遺産の両方を同時推薦できたが、来年の審査分からどちらかに絞らなければならないからだ。すでに文化遺産で「金を中心とする佐渡鉱山の遺産群」(新潟県)と「北海道・北東北の縄文遺跡群」(青森県など)が名乗りをあげている。

 「推薦自体が宙に浮く懸念もある。『もうやめよう』という空気にならなければよいが」と環境省の“憂鬱”は続きそうだ。

 ■世界遺産  貴重な遺跡や生態系などを人類共通の財産として後世に伝えるため、世界遺産条約に基づきユネスコが登録する。文化遺産はユネスコ諮問機関の国際記念物遺跡会議(イコモス)、自然遺産は国際自然保護連合(IUCN)が現地調査などを経て可否を勧告する。勧告には(1)登録(2)情報照会(3)登録延期(4)不登録−の4つがある。
https://www.sankei.com/premium/news/180523/prm1805230003-n1.html
https://www.sankei.com/premium/news/180523/prm1805230003-n2.html
https://www.sankei.com/premium/news/180523/prm1805230003-n3.html
https://www.sankei.com/premium/news/180523/prm1805230003-n4.html

http://archive.is/maPxC
http://archive.is/YCO9E
http://archive.is/ZFual
http://archive.is/B7tMn

琉球列島の軍事化と自然保護は両立できない IUCN、奄美・琉球の世界自然遺産「登録延期」を勧告【WEB RONZA2018年5月11日】
鹿児島 奄美群島と沖縄 「世界自然遺産」の登録は見送りへ【NHKニュース2018年5月4日】

posted by BNJ at 22:28 | Comment(0) | 野鳥ニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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