2018年05月23日

(生で食べるをたどって:2)鶏たたき支える「特別扱い」【朝日新聞デジタル2018年5月23日】

南薩食鳥の鶏たたき商品。同社は、チルド冷蔵の商品は九州地方へ、冷凍商品は全国に出荷している=鹿児島県南九州市
 「圧巻……」。鹿児島市内のスーパーで私は独りごちた。冷蔵ケースに鶏たたきのパックがずらり。ここでは日常のおかずなのだなあ。

 鶏肉の表面を火であぶりスライスした料理。南九州の郷土料理で、鶏刺しとも言う。鹿児島ではかつて鶏を「歩く野菜」と呼び、各戸が庭先で飼ったそう。新鮮な魚に乏しい農山村では、鶏のログイン前の続き刺し身がごちそうとされたらしい。

 ただ、最近この料理は分が悪い。全国的に生や生焼けの鶏肉によるカンピロバクター食中毒が多発しているのだ。

 鶏や牛などの腸にいる細菌で、人が感染すると下痢、腹痛、発熱などを起こす。昨年の食中毒の最多原因だ。「飲食店での生メニューによるものが多い」と厚生労働省の担当者。「いま流通する鶏肉は『加熱用』なのですが」。食鳥処理業者、卸売業者らに、鶏肉は「加熱が必要」と確実に飲食店へ伝えるよう求め、対策と監視指導を強める。

 となると、鹿児島では?

 実は県独自の生食用鶏肉ガイドラインがある。1990年代後半から全国で生食用牛・馬肉への行政指導が行われる中「鶏刺しの文化がある鹿児島では鶏肉の衛生基準が必要」と2000年に決めた。カンピロバクターなどの細菌を陰性とする成分規格目標を設定。食鳥処理場、加工、飲食店の守るべき手順を示す。

 この10年で同県の食中毒は109件。うちカンピロバクターは17件。「流通・消費量が桁違いの割には少ないのでは」と県生活衛生課。宮崎県でも同種の対策をしている。

 取材の合間に鹿児島市内の居酒屋へ。メニューの「黒さつま鶏の刺し身」を注文した。カツオのたたきのように周囲はあぶられて白い。口に入れると、クニュッと生特有の肉のやわらかさに、まろやかで甘いしょうゆがからむ。この地の甘口しょうゆがあってこその一品と感じられた。

 郷土を離れ、全国区になってしまった鶏刺し。「何も知らずに加熱用で鶏刺しを出す店や人には困っています」と南薩食鳥(鹿児島県南九州市)の黒木博専務(58)は話す。同社など鹿児島、宮崎県の約50社が「鶏の生食加工業者協議会」を組織している。

 11年の牛肉ユッケ食中毒事件で業界が大きく揺れる中、協議会は南九州の生食文化の維持発展を掲げ、12年に発足した。衛生講習などで安全性のレベルアップを図る。6月には飲食店向けのセミナーも計画中。他方、それでも生食にはどうしてもリスクが伴う。子どもや高齢者らは控えるよう消費者に伝えるポスターも作っている。

 黒木専務に工程を説明してもらった。肉の温度は常に10度以下。表面をむらなく焼き、即冷却。包丁とまな板は30分ごとに新しいものと交換。毎日抜き取りで細菌検査を実施……。聞いているうち、こうした特別扱いをしない普通の鶏肉を生で食べていたとは、危ない橋を渡っていたものだとゾクッとした。

 東京へ戻った後、出席した宴会で「鶏わさ」が並んだ。ささみの表面こそ白いが、中はピンク。うーん。結局、箸をつけずに下げてもらった。

 (大村美香)
https://www.asahi.com/articles/DA3S13507858.html

http://archive.is/ElhBo

posted by BNJ at 22:31 | Comment(0) | 養鶏畜産ニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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