2018年06月10日

【びっくりサイエンス】鳥に食べられ卵を運ばせる? 飛べない昆虫ナナフシ、命懸けの生息域拡大作戦【産経ニュース2018年6月10日】

ヒヨドリの糞から採取された卵から孵化したナナフシモドキの幼虫(末次健司・神戸大特命講師提供)

 昆虫なのに、まるで木の枝のように見えるナナフシは、多くは羽がなく移動能力も低いため鳥の餌になりやすい。だが実は、それを逆手に取って子孫の拡散に利用しているらしいことが、神戸大などの研究で分かってきた。卵は鳥に食べられても消化されず糞(ふん)とともに排泄(はいせつ)され、孵化(ふか)して幼虫になることが確認された。木の実を食べた鳥が種子を運ぶのと同じで、植物に似ているのは見かけだけではなかったらしい。

植物の種子のように遠くへ移動する条件

 多くの昆虫の卵は、植物の種子とは異なり硬い殻などに包まれていない。そのため鳥に捕食されたら簡単に消化され、糞が排泄されても孵化などできるはずがないと考えられてきた。

 だが、末次健司・神戸大特命講師(生態学)らは、この常識に疑問を抱いた。「昆虫が鳥に食べられた場合、昆虫の体内の卵が消化されず排泄される場合だってあるのではないか」。もしそうなら、昆虫も植物と同じように鳥を「乗り物」として利用し、遠くに卵を運べる。

 では、どんな場合にそれが可能になるだろう。まず鳥の消化管を無傷で通過できるほど卵が丈夫なことが求められる。また、糞の中から孵化した幼虫が、餓死しないように自力で餌場にたどりつける能力を持っていることも必要だ。

 さらに、卵は雌の体内にあるうちに食べられてしまうため、雄との交尾がなくても幼虫になれる「単為生殖」を行える昆虫でなくてはならない。一方、羽を持ち移動能力が高い昆虫は鳥を利用する必要性が低い。

覆った常識、鳥の糞から幼虫が孵化

 これらの条件を全て満たすのが、ナナフシの仲間だった。ナナフシの卵は、植物の種子に似た硬い殻を持っている。産卵は地面にばらまくように行われ、孵化した幼虫は自力で餌となる植物にたどり着く。また、多くの種類で単為生殖が可能な上、羽がない。移動能力は低く、うまく木の枝に擬態しているようでも頻繁に鳥に食べられる。

 そこで、硬い殻を持つトゲナナフシ、ナナフシモドキ、トビナナフシの卵を計約200個、ヒヨドリに食べさせて無傷で排泄されるかどうかを調べた。その結果、いずれの種も5〜20%の卵が無傷で排泄されていた。

 特に、ナナフシモドキでは食べさせた70個のうち14個が無傷で排泄され、そのうち2個が孵化して幼虫になったことも確認。鳥に捕食された昆虫の卵は全て死滅するという常識を覆した。

 ナナフシの卵が無傷のまま鳥の消化管を通過できるという知見は、ナナフシの成虫が頻繋にヒヨドリに食べられていること、ナナフシの雌の体内には単為生殖で孵化の準備ができ殻が硬くなった卵がたくさん入っていることなどを考え合わせると、植物の種子と同じように、ナナフシも鳥を子孫の分布拡大に利用している可能性が浮上してくる。

ダーウィンもびっくり? 渡りのルートとの関連調査

 もちろん、木の枝に擬態して目立たないようにしていることなどから分かるとおり、ナナフシは積極的に鳥に食べられようとしているわけではない。それでも、結果的に種の移動分散や分布拡大を促進する要因になっているとはいえそうだ。ナナフシの仲間には一度も他の陸地とつながったことがない海上の島に分布しているものも少なくないという。

 実際、オーストラリア東方沖のロードハウ島の固有種で、約100年前に絶滅したと思われていたロードハウナナフシが、同島から約20キロ離れた小島で生息していたことが昨年、確認されている。

 また、長野県安曇野市では、以前は生息の確認すら珍しかったナナフシモドキが数年前から突然増え始めた。昨夏には大発生し、山間部のケヤキの葉を食べ尽くすなどの被害が出た。同市の担当者は「ナナフシモドキをカラスが食べているのを見たことがある。なぜ急に増えたのか、どうやって運ばれてきたのか不思議だったが、鳥の捕食と何らかの関係があるのかもしれない」と話している。

 移動能力に乏しいと思われる生物が、どのように長距離移動を果たしたかは、古くはダーウィンをも悩ませた難題だ。末次特命講師は「今後、ナナフシの遺伝子を集団的に解明し、共通の遺伝子を持ったナナフシが、鳥の渡りのルートに一致して現れるかどうかや、鳥に種子の分散を託す植物とナナフシに、遺伝的に類似したパターンがみられるかなどを調べていきたい」と話している。
(科学部 伊藤壽一郎)
https://www.sankei.com/premium/news/180609/prm1806090013-n1.html
https://www.sankei.com/premium/news/180609/prm1806090013-n2.html
https://www.sankei.com/premium/news/180609/prm1806090013-n3.html
https://www.sankei.com/premium/news/180609/prm1806090013-n4.html

ナナフシ、鳥介し分布拡大か=食べられた卵ふ化−神戸大など【時事ドットコム2018年5月29日】
ヒヨドリのふんから回収した卵からふ化したナナフシモドキの幼虫(神戸大の末次健司特命講師提供)

 ナナフシの卵が鳥に食べられても消化されず、排せつ後にふ化したことを、神戸大の末次健司特命講師らの研究グループが突き止めた。鳥に捕食された昆虫は卵もろとも死ぬとの常識を覆す研究成果といい、論文は29日、米科学誌エコロジー電子版に掲載された。

【昆虫記者】マレーシア・ジャングル放浪記 天女の誘惑

 ナナフシは小枝に似た容姿で擬態する昆虫。羽がない種が多く移動能力は低いが、伊豆大島など陸続きでない場所にも生息する。研究グループによると、鳥による捕食でメスの体内にいた卵が運ばれ、分布域を拡大させた可能性があるという。


ヒヨドリに食べられるナナフシモドキ(アマチュア写真家の加藤百錬さん提供)

 同グループは、植物が果実を鳥に食べさせ、種子を遠くに運んでいることに着目。昆虫にも同様のケースがあるとの仮説を立てた。
 鳥に食べられても生き残るには、卵が丈夫で消化されず、ふ化した幼虫が自力で餌場にたどり着けるなどの条件が必要。植物の種子に似て硬い殻を持つ卵のナナフシが条件を満たすと考えた。
 研究では、3種のナナフシの卵をヒヨドリに食べさせた結果、5〜20%の卵が無傷で排せつされた。このうち、ナナフシモドキでふ化を確認した。
https://www.jiji.com/jc/article?k=2018052900003&g=soc

昆虫 したたかナナフシ、鳥に食べられても卵ふ化【毎日新聞2018年5月29日】
 鳥に見つからないよう木の枝に擬態した姿が特徴的なナナフシは、鳥に食べられてしまっても腹の中の卵が壊れないまま排せつされ、ふ化に至っている可能性があると、神戸大などの研究チームが28日付の米科学誌「エコロジー」に発表した。枝に似せるだけでは鳥の目を完全にはごまかせず、子孫を残す別の方法として、丈夫な卵を持つようになったと考えられるという。

 植物は鳥に実を食べられても中の種子はふんに混じって排せつされ、運ばれた先で芽を出すことが知られる。しかし、昆虫の場合は卵も一緒に消化され、死滅すると考えられていた。

 そこで研究チームは硬い殻を持つナナフシに着目。トゲナナフシ、ナナフシモドキ、トビナナフシの卵を、天敵であるヒヨドリに食べさせて調べた。

 その結果、5〜20%の卵が無傷のまま排出され、一部の卵はふ化も確認できたという。鳥の消化管内で押しつぶされたり、消化液に接触したりした度合いが少ない卵が生き延びたとみられる。

 一般に昆虫は受精と産卵を同時にする。しかしナナフシは雄がいなくても、雌のみで繁殖できる「単為生殖」という能力を持つため、鳥が排せつした卵でもふ化できるという。

鳥を「乗り物」に孤島にも分布例
 チームによると、ナナフシは移動能力が低いが、大陸と地続きになったことのない海洋の孤島にも分布例がある。神戸大の末次健司特命講師(生態学)は「鳥を『乗り物』にして分布を広げた可能性がある。共通の遺伝子を持つナナフシの分布と、鳥の飛行ルートを突き合わせて関係を解明したい」と話した。【渡辺諒】


https://mainichi.jp/articles/20180529/k00/00m/040/161000c

昆虫のナナフシ、鳥に食べられ卵を拡散か 神戸大など研究チーム【産経WEST2018年5月29日】
 昆虫のナナフシの卵は鳥に食べられても糞(ふん)に交じって排(はい)泄(せつ)され、その後孵(ふ)化(か)することを神戸大などの研究チームが発見した。飛べないナナフシは、体内に卵を持ったまま鳥に捕食されることで生息域を広げた可能性があるという。28日(日本時間29日)の米科学誌「エコロジー」電子版に掲載された。

 植物は、果実を食べるなどした鳥が種子を遠くまで運んで糞と一緒に排出し、生息域を拡大させてきたことが知られている。

 一方、昆虫では同様の事例が確認されておらず、捕食された昆虫は子孫を残すことができないと考えられてきた。

 チームでは、移動能力の低いナナフシが孤島などに生息域をどのように拡大させたかに注目。卵は硬い殻に覆われ受精しなくても孵化することから、天敵のヒヨドリに食べさせ、糞に混じった卵を観察した。この結果、5〜20%の卵が無傷で排泄され、一部が孵化することを確認した。

 チームは、ナナフシが個体ごと鳥に食べられても卵は消化されずに排泄され、離れた場所で繁殖する能力があると推定。ただ、ナナフシは捕食されないよう植物を擬態しており、鳥を“乗り物”として積極的に利用してきた可能性は低いとみている。

 研究チームの末次健司・神戸大特命講師は「今後は各地に生息するナナフシの遺伝子配列の特徴が、鳥の飛行ルートと一致するかも調べたい」としている。
https://www.sankei.com/west/news/180529/wst1805290011-n1.html
https://www.sankei.com/west/news/180529/wst1805290011-n2.html

http://archive.is/eWpZ8
http://archive.is/GE4qS
http://archive.is/4c4OQ
http://archive.is/wYogh
http://archive.is/Q3k8H
http://archive.is/ufgG4
http://archive.is/hOfGm
http://archive.is/Sxc1n

posted by BNJ at 22:33 | Comment(0) | 野鳥ニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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