2018年06月01日

{探る} 「海遊館」閉館後の人気企画/おとまりスクール【読売新聞2018年6月1日】

夜の生き物新たな魅力
 大阪市港区の「海遊館」で閉館後から翌朝まで、生き物たちを観察できる人気企画がある。その名も「おとまりスクール」。大水槽の前で一夜を明かしてきた。(佐々木栄)

 午後8時過ぎ、参加者35人が寝袋を手に集まった。20年以上続く企画だが、今も抽選の倍率が10倍を超えることがある。今回は女性限定コースで4・3倍。早速、昼とは違って静まり返った館内に繰り出した。

 海獣担当の飼育員、石川恵さん(32)の案内で北極圏エリアに行くと、2頭のワモンアザラシが眠っていた。「右側のアラレは換毛中で食欲が落ち気味。嫌いな種類の魚は『いらん』と口を閉じて拒否します」。解説に笑いが起きた。

 南極大陸水槽では、3種類50羽のペンギンが就寝中。体長約90センチのオウサマペンギンは首をひねり、くちばしを羽に突っ込んでいる。毛がないくちばしから体温を奪われないためという。日中は見られない姿だ。

 サンゴ礁の魚がきらめくグレートバリアリーフ水槽。熱帯の色鮮やかな魚は見あたらない。夜行性のサメやエイを警戒し、岩陰に隠れているらしい。一方で日本海溝水槽のタカアシガニは元気いっぱい、ハサミを広げて3メートル近い体を誇示する。瀬戸内海水槽でも、イセエビが生き生きと闊歩していた。




 消灯は午後10時半。深さ9メートル、奥行きが最大34メートルある太平洋水槽の中層階に寝袋を敷く。雄のジンベエザメ「海かいくん」の回遊路の正面だったようで、1、2分おきに4メートルの巨体が迫る。雌の「遊ゆうちゃん」は上層を逆向きに回っていた。

 大阪府豊中市の前波里佳子さん(43)は4度目の応募で当選した。「ジンベエザメは、止まって眠るわけではないんですね」。夜が更けても水槽を眺め続けた。

 堺市の光山優さん(28)は夜明け前、「グルグル」という音で目覚めた。カリフォルニアアシカの「ナミ」と「しずく」、今年1月に生まれたゴマフアザラシの「ひすい」が、遊び相手と思ったのか、水槽越しに呼びかけていた。「毎朝、起こしてもらいたいな」



 2日目の目玉は、バックヤード見学。飼育員は朝から大忙しだ。潜水士は水槽の汚れを専用の掃除機で吸い取っていた。和歌山沖から新鮮な海水350トンを週に3〜4回運び入れているが、清掃は欠かせない。

 食事を作る調餌室ちょうじしつでは、生き物の口の大きさに合わせてサバやホッケをさばき、釣り針がないことを検針器で調べる。「魚類は1回、アシカは3回、イルカは4回に分けて与えます」と石川さん。海遊館の餌の総量は1日300キロという。

 館内に戻ると、夜に元気だったタカアシガニやイセエビの動きが明らかに鈍い。一方、コツメカワウソは同じ水槽で展示する稚アユの群れに飛び込み、魚をパクリ。餌の時間を待ちきれなかったためだという。

 あっという間の14時間。発見できたのは、水中の生き物たちの新しい魅力と、生き物をつぶさに観察し、親密な関係を築くスタッフの努力の一端だった。



 おとまりスクールは、小中学生と保護者、女性限定、男性限定、夫婦などのコースがある。7月実施分までの募集は締め切っており、9月以降のスクールを7月中旬以降に募集する。参加費は朝食つきで大人1人7000円、小中学生4500円。
http://www.yomiuri.co.jp/osaka/feature/CO022791/20180601-OYTAT50009.html

http://archive.is/SRDM3

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