2018年06月03日

北陸ひと模様 脱サラで卵を生産する 佐々江良一さん(62) /福井【毎日新聞2018年6月3日】

農園で鶏にえさを与える佐々江良一さん=福井県敦賀市沓見で、高橋一隆撮影
鶏に感謝し命いただく
 異色の経歴だ。関西電力陸上部出身。農業に転じたきっかけは、長距離走者だった20代にあった。「大会前に貧血で倒れ、食生活への関心が高まったんです」。美浜原発1、2号機(美浜町)の当直班長を最後に45歳で脱サラし、妻以津美さん(62)の実家がある敦賀市へ。「栄養の王様」とされる卵を生産するため本格的に養鶏を始めた。

 市街を一望する旗護山の中腹、杉林の谷あいに広がる棚田で50羽から手がけた。こだわりはストレスなく自由に動き回る放し飼い。十数年かけて徐々に規模を拡大し、その数は今や4品種400羽まで増えた。変わらぬ「放任主義」のもと、鶏は土中のミミズを探したり、草むらの虫をついばむなど忙しい。

 こだわりは飼料にも及ぶ。「人と同じで鶏も食べ物が大事なんです」。トウモロコシ、米、米ぬか、カキ殻などを独自に配合し、発酵させるとその温度は40〜50度にもなる。自然由来の飼料を与えれば、卵はおろかフンも臭みが消えるという。「鶏にとって最適な環境を整えてやるのが第一。家族の一員のようなものですから」と語る。

 陸上選手だった頃に抱いた食生活への関心は、料理にも向いた。調理学校に通い、各種学校家庭料理教員資格を取得。食育の観点から、農園にも料理教室を開ける工房「コッコハウス」を2002年に建てた。給餌や卵拾いを体験してもらい、プリンやオムライスなどの卵料理をつくってもらう試みで、08年からはかまど炊きの白飯に卵をのせた卵かけご飯も提供。子どもたちにも大人気だという。

 農業体験では、参加した子どもたちに卵を割って見せる。黄身の中の白い点を「これがひよこの元。生き物の命を私たちはいただいているんですよ」と語りかける。その狙いを「鶏と一緒にふれあって鶏と卵のぬくもりを感じてほしいんです。そうすると『ごめんね鶏さん、ありがとう』という言葉が自然に出てきますね」と話す。

 農園暮らしは悠々自適にも映る。だが、04年には鳥インフルエンザの影響で客足が遠のいた。売れ行きが落ち込み、農園のPRを兼ねて卵を配り歩いた日々も。思うように販路を拡大できず、体調を崩した時期もあった。その一方で、安定した仕事を捨て、農業を選んだことに間違いなかったと確信する。「自然と生き物に感謝し、安心感を人々に伝え続けることができる」。その笑顔に、自信が垣間見えた。【高橋一隆】

 ■人物略歴

 岡山県倉敷市生まれ。敦賀市沓見の「ささえたまご農園」(0770・21・0063、携帯090・3887・6112)を営む。2008年の農林水産大臣賞(毎日農業記録賞)など受賞多数。原則で年中無休だが、各種体験は予約制。
https://mainichi.jp/articles/20180603/ddl/k18/040/158000c

http://archive.is/DQGXU

posted by BNJ at 21:48 | Comment(0) | 養鶏畜産ニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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