2018年08月21日

ライチョウ 絶滅回避への小さな光【信濃毎日新聞2018年8月21日】

 ニホンライチョウの絶滅回避へ、小さな光が差してきたように感じる。

 南アルプス北岳(山梨県)で続けているひなの「一時保護」から育った親が、子どもをつくったことが分かった。人の手で守られた命が次の代につながった。

 北岳での一時保護は、大町山岳博物館など国内数カ所で続けている低地での人工飼育と並ぶ2本柱の一つだ。生息地の植生保全、天敵対策など課題を一つずつ克服して、「氷河期の生き残り」の命を未来へ伝えたい。

 南アはライチョウがすむ国内五つの山域の中で最も南に位置する。ライチョウの仲間の生息域として世界の南限でもある。

 温暖化やニホンジカの食害などにより、えさとなるお花畑が年々縮小している。5カ所の中で絶滅の危険度が最も高い生息地の一つと考えられている。

 「一時保護」は、ひなが生まれてから約1カ月間、夜間にひなを親鳥と一緒にケージの中に入れて天敵や風雨から守る。日中は外に出して自由に運動や砂浴び、捕食をさせる。

 中村浩志信州大名誉教授の指導により環境省が2015年度から取り組んでいる。人間を恐れない鳥だからこそできるやり方だ。

 環境省信越自然環境事務所(長野市)の担当者がこの春、北岳近くの尾根を調査し、昨年一時保護した雄がひなを連れているところを見つけた。

 ケージ保護で育った雄が自然の中で成鳥に育ち、自分で雌を見つけて次の世代を生んだ。希望を感じさせる出来事だ。

 北岳付近には、天敵から身を隠し、巣作りの場所にもなるハイマツ帯が広く分布している。本来、生息に適した山域である。

 一時保護の技術が確立し、軌道に乗れば、安定的な生息に道が開ける可能性がある。

 一時保護は、気象条件の厳しい高山でライチョウと寝起きを共にするような仕事である。ここまでこぎ着けた関係者の熱意と努力に敬意を表したい。

 中ア駒ケ岳で7月、登山者が雌1羽を目撃し写真に撮っている。半世紀ほど前に絶滅したとされる山域だ。雌は近親交配を避けるため、繁殖期になると群れから離れて遠くへ移る性質がある。

 天敵のテンやカラスの捕獲、駆除、腸内細菌の解明など、多方面からの努力が専門家によって続けられている。中アを含め各地の山で元気に飛び回る日を想像しつつ、取り組みを見守ろう。
https://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20180821/KT180820ETI090004000.php

http://archive.is/odGLT

posted by BNJ at 10:19 | Comment(0) | 鳥類コラム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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