2018年08月27日

【一筆多論】佐藤好美 動物園のトライアル【産経ニュース2018年8月27日】(ライチョウ)

室内のハンモックで遊ぶジャイアントパンダのシャンシャン=9日、東京・上野動物園(東京動物園協会提供)

 上野動物園担当だった記者2年生のときは、サルの個体識別ができた。金魚やメダカの個体識別ができるという人もいるから、実はサルくらいは、どうということはない。ヒトを見分けるのと同じで、単に顔が違うのである。

 当時、同園の飼育係だった小宮輝之さん(70)は鳥マニアで、不忍池でカモの写真ばかり撮っていた。

 園長を務め、日本動物園水族館協会の会長も経て、今は悠々自適。その小宮さんから著書が送られてきた。『シマウマのしまはサカナのほね』(メディアパル)。

 それが、シマウマの「しま模様」とか、シカの「鹿(か)の子模様」とか、キリンの「網目模様」とか、ヒョウの「ヒョウ柄」とか、動物の模様に特化した写真集なのだ。ページを繰ると、シマウマの背中のシマの写真が続き、次はお尻のシマが続く、といった具合。大型ネコ類8種の顔の模様ばかりのページもある。

 動物園関係者は「いつまでたっても、やることが子供みたいな人。でもだからセンスもいい」と評する。

 園長時代は、クマの冬眠を見せたり、ナマケモノが観客の頭上の木を渡るようにしたり、飛べないオオワシを不忍池の島に放し飼いにしたり、次々に新しいことを始めた。

 自分がオモシロイと思うことを、取りあえずやってみることは、当たり外れはあるかもしれないが、世の中を変える可能性がある。

 ある日、ふらりと寄るとスタッフの一人から「うちのダースベイダーを見せてあげる」と言われた。人生で初めて、ペリカン目(もく)の大型鳥「ハシビロコウ」を見た。世の中に、こんな生き物がいるのかと仰天した。

 珍しい動物を飼育するのは、動物園の古典的な役割の一つだ。動物園のスタイルは、1828年に開園したロンドン動物園が作ったといわれる。世界中からさまざまな分類、綱(こう)や目の生き物を集めて動物学を発展させた。

 役割はその後、だいぶ変化した。野生動植物の国際商取引を管理する「ワシントン条約」ができ、動物園が「野生動物の消費者」と批判されるようになったことも大きい。

 繁殖は今や最重要課題。より広い飼育場、野生に近い雌雄のバランスで環境を整え、繁殖したら他園と交換する。世界中の動物園に動物ごとの担当者がいて、血統を管理する。

 絶滅が心配される日本種の保存にも一役買う。野生のライチョウは今や1700羽ほど。だが、技術がないと、飼育や繁殖はできない。上野動物園は小宮さんの時代に、ノルウェーの動物園から安定した数の亜種「スバールバルライチョウ」の卵をもらってきて飼育経験を積んだ。環境省はこうした実績などを踏まえ、ライチョウの保護増殖事業を開始。今は、複数園が人工飼育に取り組む。

 夏休みの動物園では、1年2カ月前に生まれたパンダのシャンシャンが変わらぬ人気だ。そういえば、「パンダも面白いけどアリも面白い。動物園が、そういう展示をできるかどうかだ」と言っていた人もいたなぁ、と過去の識者らの言葉に思いをはせるのである。(論説委員)
https://www.sankei.com/column/news/180827/clm1808270006-n1.html
https://www.sankei.com/column/news/180827/clm1808270006-n2.html
https://www.sankei.com/column/news/180827/clm1808270006-n3.html

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