2018年09月03日

順天(スンチョン・韓国)――生き物の楽園を歩く【読売新聞2018年9月3日】

広大な順天湾湿地。緑のアシ原は、秋が深まるとともに黄金色に変わっていく
 一面に広がるアシが、風に吹かれて波打っていた。韓国南西部、全羅南道チョルラナムドの順天スンチョン市にある「順天湾湿地」は、2260ヘクタールの広大な干潟に、計540ヘクタールのアシの群生地が点在している。サラサラと心地よい葉音を全身に浴びると、煩わしい日常から解放された気持ちになった。

 アシ原に整備された木製の遊歩道をのんびりと歩いた。アシの根元をのぞきこむと、あちこちに開いた小さな穴から、カニが続々と出てくる。「ほら、ムツゴロウもいますよ」。通訳案内士のチェ・スッキさん(42)が指さす方向に目を凝らせば、胴体をくねらせて進む独特の姿が。ここには多種多様な生き物が息づいているのだ。2006年には湿地の保全などに関する「ラムサール条約」に登録された。

 カササギが空を舞い、アオサギが水辺で羽を休めていた。1年を通して約230種の鳥が確認できるそうだ。ナベヅルなどの渡り鳥の中継地としても知られる。順天市は地域住民と協力し、渡り鳥の負傷や感電死を防ぐために電柱282本を撤去。鳥が憩える場を設けるため、飲食店6軒も移転させたという。日本でツルの越冬地として有名な鹿児島県出水市とは、12年に姉妹都市になった。

 湿地を見渡す展望台を目指した。小高い山の上にある。思ったより山道がきつくてすぐに足が重くなり、汗が噴き出した。だが、約30分かけて登るだけのことはあった。ゆったりとS字を描く水の流れを挟んで、干潟が広がっていた。アシは所々で円を描いて群生していて、まるで水面みなもに浮かぶ巨大なスイレンの葉のよう。自然が生み出す造形美に心を奪われた。

 「ここから見る夕日もまた格別ですよ」とチェさん。空も大地もオレンジ色に染められ、美しく輝くそうだ。

 湿地の約6キロ北にある順天湾国家庭園にも足を延ばした。日本や中国、イギリスなど世界各国の庭園があり、色とりどりの花が園内を彩っている。タイ庭園には大きなゾウのモニュメント、オランダ庭園には青空に映える風車があり、お国柄がうかがえて面白い。

 ここは13年4月から半年間開催された国際的な庭園博覧会の会場で、閉幕後に観光施設としてオープンした。博覧会には世界23か国が参加し、日本からは佐賀県や出水市なども出展したという。佐賀県が造成した庭園は、有明海を枯山水で表現するなどした日本庭園で、現在も見ることができる。

 国家庭園がここに造られたのには理由がある。庭園の北には、住宅街などが広がる。都市開発が湿地に及ばないように壁の役割を果たし、干潟の保全に一役買っているのだという。

 旅の終わり、湿地近くの飲食店でムツゴロウのチゲを堪能しながら、豊かな自然と、それを守ろうとする人々の強い意志を思った。次は夕日を見に、またあの山に登ろう。(文と写真 生活文化部・饒波あゆみ)

◆王朝時代の家そのまま

どこか懐かしい雰囲気の漂う楽安邑城
 韓国を代表する民族村「楽安邑城ナガンウプソン」は、400年以上前の朝鮮王朝時代の民家などが、当時のまま保存されている。時代劇の撮影が行われることも多く、日本でもヒットした韓国ドラマ「宮廷女官チャングムの誓い」のロケ地としても知られる。

 全長約1400メートルの石壁で囲まれ、わらぶき屋根の民家や役所跡などがある。村内では現在も約100世帯が暮らし、観光客の宿泊施設もある。当時の生活を体験できるプログラムもあるそうだ。


●あし 福岡空港から釜山市の金海キメ国際空港まで約1時間、釜山西部バスターミナルから順天総合バスターミナルまで高速バスで約2時間半。釜山港国際旅客ターミナルを出発して順天の観光スポットをバスで巡る日帰りのツアー「ご当地シャトル」もある。

●問い合わせ 韓国観光公社福岡支社=092・471・7174

◆味…名物の赤貝を豪勢な定食に

 順天の名物は赤貝だ。楽安邑城近くの「チョンサトゥル」((電)+61・755・8289)では、赤貝を使った定食(1人前1万5000ウォン=約1500円)=写真=が味わえる。

 定食の貝料理は3品で、チヂミ、蒸してネギや唐辛子などの薬味を添えた料理、ダイコンやニンジンと一緒にコチュジャンなどであえたものが出てきた。あえ物は甘辛く、シャキシャキした野菜と貝の食感が楽しい。チヂミはタレをつけずにそのままいただく。そのほか、みそチゲ、キムチ、ナムルなど数々のおかずがついて豪勢だ。

 赤貝は日本のものより小ぶり。社長のノ・ヨンウさんは「干潟で育つ赤貝は、カルシウムが豊富でおいしいですよ」と薦める。
https://www.yomiuri.co.jp/kyushu/feature/TO001819/20180903-OYS1T50037.html

posted by BNJ at 23:56 | Comment(0) | 海外の鳥ニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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