2018年10月13日

(今さら聞けない+)希少種の野生復帰 鳥類に続き、哺乳類でも準備中【朝日新聞デジタル2018年10月13日】

希少種の野生復帰<グラフィック・小林省太>

 絶滅の恐れがある動植物を守るため国が作った希少種の保護増殖事業計画では、飼育下で繁殖させた個体を野生に戻す「野生復帰」の取り組みが盛り込まれた動物もいます。対馬にのみ生息するツシマヤマネコでは将来、各地の動物園で生まれた個体を訓練し、野生に戻す青写真が描かれています。

 長崎県対馬市の南部に、2013年4月に開所した「ツシマヤマネコ野生順化ステーション」。ヤマネコを自然に近い環境に慣れさせる施設です。約7万平方メートルの敷地内の柵で囲まれた六つの屋外訓練エリアは草地や池など元の地形を生かして作られ、交通事故を避ける訓練を想定して道路を設けたエリアもあります。

 ヤマネコが野生で生きるには、最適なすみかの確保やネズミや昆虫など餌の捕獲といった能力が必要です。ステーションでは、まずイエネコ2匹を使って、けがをしないように施設の安全面を点検したうえで、訓練方法を探っています。昨年6月には初めて実際のヤマネコも導入。島内で保護された高齢のメスで野生に戻す予定はないものの、安全に訓練できるかを調べるのに一役買っています。

     □     □

 ツシマヤマネコは、開発などによる生息環境の悪化や交通事故などで生息数が減少し、現在は推定70〜100匹。環境庁(当時)は1994年、「種の保存法」に基づき、国内希少野生動植物種に指定しました。翌年に保護増殖の計画を作り、島内で捕獲したヤマネコを島外で分散飼育して繁殖させ、野生に戻すことで個体数を回復させる方針を盛り込みました。

 病気や災害による全滅のリスクを避ける狙いもある分散飼育は、各地の動物園に協力を依頼。96年に福岡市動物園が初めて引き受け、2000年には飼育下での繁殖に初めて成功しました。現在は島外の8園で34匹が飼育され、飼育下で生まれた個体同士での繁殖事例も。一部の園ではヤマネコを公開し、希少種保護への理解を深めてもらっています。

 ただ哺乳類の野生復帰は国内初の試みで、まだ時間がかかりそうです。対馬自然保護官事務所の山本以智人・上席自然保護官は「すべてが初めてで手探りの状態。期待が大きい分、慎重に進めていきたい」と話します。

 野生復帰は鳥類などで先例があります。沖縄本島北部のみに生息するヤンバルクイナでは個体数の激減に備え、飼育下で繁殖させた個体を季節や訓練期間など条件を変え、実験的に野に放っています。生息域外の沖縄本島南部にある沖縄こどもの国での分散飼育も始める方針です。国内でいったん絶滅したトキも、中国から供与された個体を飼育下で繁殖し、訓練を経て毎年放鳥しています。初放鳥から今年で10年。野生下に生息するトキは新潟県・佐渡島を中心に350羽超まで増え、半数以上が野生下で生まれた個体です。

     □     □

 希少種の繁殖を後押ししようと、飼育などに取り組む動植物園を国が認定する「希少種保全動植物園」制度も始まり、9月に富山市ファミリーパーク、世界淡水魚園水族館アクア・トトぎふの2施設が初めて認定されました。

 分散飼育や繁殖には全国の動物園の協力が必要ですが、希少種の移動は法律の規制があります。繁殖などで希少種を施設間で移動させる際には、受け入れ先と移動元で国に申請が必要で手間や時間がかかりましたが、認定されると申請は不要になります。

 また認定施設が増えて希少種の貸し借りが活発になれば、近くの動植物園で貴重な希少種を見られる機会が増えるかもしれません。ツシマヤマネコなど希少種13種を飼育する富山市ファミリーパークの石原祐司園長は「今後色々な動物園と連携し、希少種の保全を進めたい」と話します。

 ■記者のひとこと

 15年前に対馬でヤマネコの初めての一般公開を取材しました。それから訓練施設ができるなど、野生復帰への取り組みは少しずつ進んでいます。当時から「いつ実現するの」という声はありましたが、早急な成果を求めず、気長に見守っていくことが大事だと感じています。(川村剛志)
https://www.asahi.com/articles/DA3S13718366.html

http://archive.is/xxWFv

posted by BNJ at 11:54 | Comment(0) | 野鳥ニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: