2018年10月28日

宮城)渡り鳥育む「ふゆみずたんぼ」ラムサール条約湿地【朝日新聞デジタル2018年10月28日】

地図

 日が暮れるとともに、マガンの群れが次々と蕪栗沼の方へと飛んでいく。夕暮れの茜(あかね)空に浮かび上がる月に重なるその姿は、万葉集で詠まれた和歌の情景を思わせる。

 10月下旬、大崎市中心部から車を30分ほど走らせ、蕪栗沼の近くでマガンの群れを見つけた。周辺の伊豆沼・内沼、化女(けじょ)沼とともに、県北にある三つの沼は、いずれもラムサール条約に登録された湿地だ。県によると、国内に飛来するマガンの約8割が県北部域に集中している。

 日本雁(ガン)を保護する会の呉地正行会長によると、定期的にガン類が飛来する場所は国内に50〜60カ所で、その大多数が県内で越冬するという。「越冬するには、ねぐらとする沼、餌を取る広い田んぼが必要。ガンは警戒心が強いため、道路から100メートルぐらい離れた田んぼを選ぶ。ガンはかつて全国にいたが、沼が次々と干拓されて生息環境がどんどん消えている」と指摘する。

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 国土地理院が2000年にまとめた調査では、地図で明治・大正時代と湿地面積を比較すると、61%に当たる約1290平方キロ(琵琶湖の約2倍の広さに相当)が消失していた。

 越冬地が集中すると、感染症で一夜にして全滅したり、周囲の農作物への食害も出てきたりする。「鳥の数が地域の環境に見合うことで人との共存ができる。そのためには、分散化が欠かせない」(呉地さん)。

 その切り札が「ふゆみずたんぼ」。冬の間、稲刈りを終えた田んぼに水を張って、渡り鳥のねぐらやエサ場にする取り組みだ。

 環境保護団体や農業者が話し合いを重ね、蕪栗沼に接する大崎市の伸萠(しんぽう)地区で03年に「ふゆみずたんぼプロジェクト」が始まった。20ヘクタールの田んぼに、ハクチョウやガン、カモが頻繁に姿を見せるようになり、05年には蕪栗沼とともに、周辺の水田もラムサール条約湿地として登録された。

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 水田の生物多様性に詳しい、NPO法人田んぼの岩渕成紀理事長は、ふゆみずたんぼを「農業の生産性を上げて、生物多様性をもたらす効果もある」と評価する。

 水を張ると微生物が増えて、田んぼの表面にトロトロ層と呼ばれる肥沃(ひよく)な層ができる。そのために一部の雑草が生えにくくなり、農薬の使用を抑えることにつながるという。

 「田んぼは本来湿地。浅い水があることで生物多様性を育んできたが、大型機械を使うために必要以上に水を引いて超乾田となり、田んぼの生物多様性が失われた」と岩渕さん。

 いま、伸萠地区から発展した取り組みは、北海道から九州まで広がっている。

 5ヘクタールで農薬や化学肥料を使わずに、ふゆみずたんぼに取り組む蕪栗グリーンファーム代表の斎藤肇さん(44)は言う。「冬でも鳥のエサとなるドジョウやザリガニがたくさんいる。人の営みの中に鳥が入ってきて、互いに寄り添う生活文化が生まれているんです」(角津栄一)
https://www.asahi.com/articles/ASLBT77CJLBTUNHB01J.html

http://archive.is/8ri7V

posted by BNJ at 11:13 | Comment(0) | 野鳥ニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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