2018年11月06日

生態系を乱す風力発電所の「天敵」効果、国際研究【AFPBB News2018年11月6日】

【11月6日 AFP】一部の生態系においては、風力発電所が最上位の「捕食者」として機能しており、食物連鎖の頂点に位置する猛禽類に害を及ぼしているとの研究論文が5日、発表された。論文は、グリーン(再生可能)エネルギーの推進者らが、風力発電所が引き起こしているドミノ効果を見過ごしている現状を指摘した。

 再生可能エネルギー部門で最も急成長している風力は、世界の電力需要の約4%を供給している。

 世界では現在、チュニジアの国土面積にほぼ匹敵する1700万ヘクタール近くが風力発電のために使われている。しかし、風力発電技術が野生生物に及ぼす影響については、開発者から「非常に過小評価」されてきたと、研究者らは警鐘を鳴らしている。

 今回の最新研究では、国際研究チームがインド・西ガーツ山脈(Western Ghats)での風力タービンの使用による影響を調査した。同国の西海岸地域に広がるこの山岳森林地帯は国連教育科学文化機関(UNESCO、ユネスコ)の世界自然遺産(World Heritage)に登録されており、生物多様性の世界的な「ホットスポット」となっている。

 調査の結果、風力タービンがある高原地域では、肉食猛禽類の個体数が、他の地域に比べて4分の1ほど少ないことが分かった。このかく乱が食物連鎖の下位層へと波及し、猛禽類の餌となる小動物の個体数密度と行動を根本的に変化させた。

 特に、猛禽類が好んで捕食するファンスロートリザードと呼ばれるトカゲの個体数をめぐっては、風力タービンが多数ある地域で急増していることを、研究チームは観察を通じて突き止めた。また、基本的に天敵がいない環境では、トカゲの行動と外見に有意な変化が生じたことも確認した。

 論文の筆頭執筆者で、インド理科大学院(IISc)生態学センターのマリア・ターケル(Maria Thaker)助教は、AFPの取材に「われわれが注目した点は、ファンスロートリザードの行動、形態、生理機能などに生じた微妙な変化だった」と語った。

 風力タービン周辺で猛禽類の個体数密度が減少したのに伴い、ファンスロートリザードに対する捕食攻撃の発生率も低下しており、その結果、風力発電所の内部および周辺に生息するトカゲは、起こり得る危険に対する警戒レベルを引き下げていた。

 今回の研究で実施した「天敵攻撃」シミュレーションでは、人の接近でトカゲが逃げ出す限界の距離を測定した。結果、風力タービンから離れた地域に生息するトカゲに比べ、この地帯のトカゲには、最高で5分の1の距離まで近づくことができた。

■「グリーンエネルギーについて賢明になる」

 風力タービン近くのトカゲはストレスホルモンの濃度が低いことが、検査の結果明らかになった。これは西ガーツ山脈に風力発電所が建設されて以降の20年間で出現したであろう特質だ。

 風力発電所については、移動のパターンを乱したり、平均を上回る割合で死を引き起こしたりするなど、野鳥に悪影響を及ぼすことが知られている。

 英科学誌「ネイチャー・エコロジー・アンド・エボリューション(Nature Ecology & Evolution)」に発表された今回の研究は、風力発電所が猛禽類を寄せつけないことにより、食物連鎖における最上位捕食者の役割を再現していることを示していると、ターケル氏は指摘した。

 同氏はまた、「風力発電所はまるで頂上捕食者であるかのように、生態系内の動物のバランスに変化を引き起こす」としながら、「風力発電所は、猛禽類を殺すという意味ではなく、地域内に存在する猛禽類の個体数を減らすことにより、猛禽類にとっての『捕食者』となっている」と説明した。

 その一方でターケル氏は、人為的炭素排出量が増加を続ける中、風カエネルギーは気候変動の影響の軽減において不可欠だと述べる。

 だが、風力発電所の影響が、地球の生態系のこれまで考えられていたより深いレベルにまで達している証拠が示された以上、こうしたグリーンエネルギー源がもたらす環境的影響への配慮を広げる必要があるとも指摘した。

 ターケル氏は、「風力タービンが飛行動物に悪影響を及ぼしていることを科学者らが認識するのに数十年を要した」と前置きをしたうえで、「グリーンエネルギーの解決策をどのように展開するかについて賢明になる必要がある。地球上の人的設備の設置面積を減らし、建物の上などの、すでに何らかの形でかく乱を受けている場所に風力タービンを設置しよう」と続けた。
http://www.afpbb.com/articles/-/3196319
http://www.afpbb.com/articles/-/3196319?page=2


posted by BNJ at 21:58 | Comment(0) | 海外の鳥ニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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