2018年11月17日

餌付け、給餌に関する安易な報道について【報道の検証2018年11月17日】

昨今、野生鳥獣への餌付けが様々な問題を引き起こすことが指摘され、自治体も餌付け行為を禁じる条例を制定するなど対処に乗り出しているところであるが、メディアは依然として餌付けに対し肯定的な報道を行っている。
本記事では実例を挙げつつ安易な餌付けに関する報道の問題について取り上げる。

餌付けがもたらす問題
・人間との距離が近づき、人畜共通感染症の蔓延につながる(例、エキノコックス、鳥インフルエンザ、STFS)
・人間との距離が近づき、人的被害や動物の捕殺が生じる(例、ヒグマ)
・人間との距離が近づき、農作物被害を引き起こす(例、イノシシ、ニホンザル)
・人間との距離が近づき、交通事故が増える(例、キタキツネ)
・餌付けにより環境が汚染される(例、ハクチョウへの給餌による水質汚濁)
・餌付けにより生態系が撹乱される(例、コウノトリへのドジョウやアメリカザリガニなど国内外来も含む外来生物の給餌による在来生物の捕食や遺伝子汚染)


餌付けによる弊害についてはさらなる検証が必要な事例もあるが、上記の内容については論を待たないだろう。
以下にわずかではあるが、このような問題を扱った書籍、行政のページを紹介する。

野生動物の餌付け問題 善意が引き起こす? 生態系撹乱・鳥獣害・感染症・生活被害
畠山武道 監修 小島望・高橋満彦 編著 地人書館
野生動物の餌付け問題: 善意が引き起こす? 生態系撹乱・鳥獣害・感染症・生活被害
小島 望 高橋 満彦
地人書館 (2016-08-17)
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クマやサルなど野生動物への餌付け防止について || 野生鳥獣の保護及び管理[環境省]
https://www.env.go.jp/nature/choju/docs/docs3/index.html

番外:野生生物たる水鳥の餌付けについて 環境省 関東地方環境事務所_羽田ミヤコタナゴ生息地保護区「ミヤコタナゴの部屋」
http://kanto.env.go.jp/wildlife/mat/data/m_1_1/bangai.html

安易な餌付けをやめましょう | 北海道環境生活部環境局生物多様性保全課
http://www.pref.hokkaido.lg.jp/ks/skn/sizenhome/ezukebousi.htm


以下、実際の報道例について、民間事業者による商用の観光餌付け、保護を兼ねた水鳥への観光餌付け、個人による餌付けの3つのタイプに分けて見ていく。
餌付けについて肯定的な報道は全国紙、地方紙ともに非常に多く、今回取り上げるのはごく一部であるが、興味のあるかたは弊ブログ「給餌」のタグからご覧いただきたい。
給餌: BirdNewsJapan http://birdnewsjapan.seesaa.net/tag/%8B%8B%89a


民間事業者による商用の観光餌付け
民間の営利活動を記事にしたもの。観光船での海鳥への餌付けは今も各地で広く行われている。山間部の宿でトビを対象としたものもある。

牛窓で海鳥に餌やり体験クルーズ ホテルリマ−二 新サービス開始【山陽新聞デジタル2018年10月22日】

観賞船で餌をあげよう 高島のウミネコ繁殖シーズン【大分合同新聞2017年5月2日】

料理に温泉 いい宿満喫! 旅館ひさご 筒井康博さん【東日新聞2017年2月4日】


天竜浜名湖鉄道佐久米駅でのユリカモメ給餌については鳥インフルエンザ流行を機に県が自粛を要請、餌付けを行っていた人物や餌付けによる観光振興を行っていた観光協会は苦しい立場に陥った。
このような事業が行われてしまう一因に、メディアによる安易な報道もあるのではないか。

餌付け自粛前
(ひとえきがたり)浜名湖佐久米駅 静岡県、天竜浜名湖鉄道 800羽の白い群れは冬限定【朝日新聞デジタル2015年2月10日】

浜松の「浜名湖佐久米駅」にユリカモメの大群 頭の上に止まるシーンも【浜松経済新聞2016年1月5日】

【鉄学しましょ】カモメの魔術師 木村裕子【東京新聞2016年2月17日】

餌付け自粛後
餌やり自粛呼び掛け ユリカモメ飛来 浜名湖佐久米駅【静岡新聞アットエス2017年1月5日】

ユリカモメ「PRしたいのに」 浜松、鳥インフル対策で“自粛”【静岡新聞アットエス2018年1月17日】

この問題については過去に弊ブログで取り上げている。
天竜浜名湖鉄道浜名湖佐久米駅のユリカモメをめぐる報道について【報道の検証2018年2月3日】


保護を兼ねた水鳥への観光餌付け
ハクチョウ以外ではオシドリが多い。
過密状態での越冬は鳥インフルエンザウイスルの変異や蔓延の可能性が指摘されている。
流行期には予防ため自治体が給餌の自粛を要請することも多いが、従わずに続ける個人、団体もある。
水鳥への給餌と安全な越冬地の提供が保護に貢献してきた歴史もあるが、今後のあり方については報道も含め慎重な対応を望みたい。

「白鳥おじさん」掛け声高らか 阿賀野・瓢湖で餌付け始まる【新潟日報モア2018年10月18日】

鳥インフルエンザ 野鳥死骸陽性 瓢湖、立ち入り禁止 観光地、静まり返り /新潟【毎日新聞2016年12月3日】

犀川白鳥湖 餌やり再開 安曇野のコハクチョウ飛来地【信濃毎日新聞2016年12月15日】

オシドリ冬支度 設楽・寒狭川に飛来【中日新聞2018年10月28日】


個人による餌付け
しばしば美談として扱われる。
このような個人による餌付けは糞害などのトラブルにつながることもあり、安易に称賛するべきではない。
餌台による給餌は観察の良い機会にもなり、海外では越冬期のバードフィーダーによる給餌をイベント化して調査に利用しているが、過去に国内では餌台でのサルモネラ菌感染によると見られるスズメの大量死も起きている。適切な運用、啓発が求められる。

広島原爆孤児「すずめおじさん」の恩返し 83歳、餌やり「罪滅ぼし」【西日本新聞2018年8月3日】

スズメにモテる石垣島のタクシーが話題【沖縄タイムスプラス2017年2月2日】

スズメが肩にひらり、そのまま家族の一員に 深谷の夫婦宅で飛び回る【埼玉新聞2016年1月22日】

逮捕・釈放後にますます「ハト男」蛮行エスカレート! 一日数回エサやり50羽群がる【J-castニュース2017年12月27日】(既報関連ソースあり)

日本野鳥の会 : 餌台(バードフィーダー)の管理について https://www.wbsj.org/activity/conservation/infection/inf-birdfeeder/


以上のように、餌付けが引き起こす問題を軽視した安易な報道が多く見られる一方、餌付けの問題点を指摘する記事もある。

一筆半歩 観光振興とエサやり=本間浩昭 /北海道【毎日新聞2018年2月18日】

野生生物の餌付け 本能奪い自然破壊にも【上毛新聞ニュース2018年1月9日】

島根)大橋川にユリカモメ 専門家「餌やりやめて」【朝日新聞デジタル2018年1月15日】

記者各位の科学リテラシーの向上と、このような啓発記事の充実を強く期待する。

posted by BNJ at 21:22 | Comment(0) | 報道の検証 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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