2018年11月20日

渡り鳥の楽園、山陰・中海 野鳥点描【産経ニュース2018年11月20日】

 鳥取、島根両県にまたがる広大な汽水湖「中海(なかうみ)」は、野鳥たちの宝庫だ。本格的な冬を前に、越冬で飛来したコハクチョウやカモ類が水面に姿を浮かべ、ヨシ原にはオオジュリンなどが潜み、上空をタカの仲間チュウヒが舞う。湿地には獲物を狙うイタチも出没する。鳥取県米子市の中海沿岸で撮影した、コハクチョウなど野鳥を中心とした生き物たちを紹介する。(山根忠幸、写真も)

■ヨシ原にオアシス…冬鳥トラフズク、オオジュリン…イタチ、ヌートリアも

 冬の使者コハクチョウは10月14日、今季初飛来(第1陣)の7羽が、中海の米子水鳥公園(広さ28ヘクタール)で確認された。未明に降り立ったとみられるが、長旅の疲れを癒やす間もなく、災難に見舞われることになった。中海に君臨する留鳥(りゅうちょう)の外来種コブハクチョウ2羽が、公園の池にいたのが不幸の始まりだ。

コブハクチョウ(後ろ)に襲われて逃げ惑うコハクチョウ

 周囲が明るさを増した午前8時20分、1羽のコブハクチョウが、全身をふくらませた威嚇のポースで約500メートル離れた場所からコハクチョウに接近してきた。「これは危ない」と思った瞬間、コブハクチョウは羽根をばたつかせて水面を突進。標的となったのは、群れから離れていた2羽で、逃げ惑うところを執拗(しつよう)に攻撃していた。

 コブハクチョウは、この池を“縄張り”と考えているようで、コハクチョウは許されざる侵入者というわけだ。攻撃は収まらず、30分もたたないうちにすべてのコハクチョウが公園から追い払われてしまった。その後もコハクチョウの群れはやってきて、今は30羽ほどが滞在しているが、コブハクチョウが横暴ぶりをいつ発揮するのかヒヤヒヤだ。

ヨシ原のオアシスに息を潜めていたトラフズク

 同市の中海沿岸は、奈良時代の『出雲国風土記』にも記される「夜見島(よみのしま)」(現在の弓ヶ浜半島)の西側にある。砂浜が広がり、江戸時代は綿の一大産地として栄えた。現在は特産の白ネギの他、ニンジンなどが栽培されているが、耕作が放棄された土地も目立ち、湿地にはヨシ原やガマの群落が点在している。こうした環境が多種多彩な野鳥たちを呼び寄せる。

 ヨシ原の中に「オアシス」と名付けた場所がある。約20本の樹木が並び、ヨシ原に浮かぶ孤島のようにみえる。


 10月16日にここを訪れた。下草をかき分けて林に踏み入ると、木の枝に止まるフクロウの仲間で冬鳥のトラフズクと視線が絡み合った。

 「早いね。もう来たのかい」「眠りを邪魔したかい」。心の中でそう話しかける。これが私の写真撮影のスタイルだ。一瞬であっても野鳥と心を通わせたい。そして写真を撮らせてもらっている。

かわいらしいしぐさのイタチ

 「オアシス」は、イタチの縄張りでもあり、頻繁に出合う。「プー」と名付けたイタチは11月8日、つぶらな瞳で見つめ、農道で腹ばいになって歓迎してくれた。うれしい時のわが家のネコと同じしぐさだ。プーは、外来種のチョウセンイタチだろう。ニホンイタチは、体格が優れたこの種類に追われ、山地の渓流などで、ようやく生き延びているという。

 生き物には“警戒域”がある。例えば、エレベーターに乗り込んだ見知らぬ人同士が、自然と離れた場所に陣取るようなもの。野鳥は、この警戒域が種類によって随分と違う。過去の経験ではオシドリが最も広い。距離約100メートルでも物音を立てたり姿を見せれば逃げ去ってしまう。逆に冬鳥ジョウビタキは数メートルでも平気でいることが多い。個体差もあるが、撮影にはこうした野鳥の種類や生態を知ることが欠かせない。

ヨシ原から顔をのぞかせたオオジュリン

眼光鋭く獲物を狙うチュウヒ
 野鳥にストレスを与えないベストの撮影方法は、超望遠レンズの使用だ。自然なショットをファインダーに収めることができる。ただ、伸びたヨシがじゃまをするヨシ原ではそうもいかないので、ひたすら待機することになる。

 秋から冬に向けてのヨシ原は、野鳥の種類が日替わりだ。そこで連日のように夜明けと同時に訪れ、午前7時を基本に、活発に活動する野鳥たちを観察する。ただ、撮影には光量が足りないことが多く、出直すことも度々ある。


 プーと出合った8日は、冬鳥オオジュリンがヨシ原で群れ騒いでいた。旅の途中で立ち寄ったのか、越冬組の大量飛来だ。この鳥はヨシ原に潜み、姿を垣間見るのがやっとで、撮影チャンスは限られる。そこで早朝に観察した場所で見当を付け、隠れて待機。シャッターチャンスを待つが、効率は非常に悪い。

魚をわしづかみして上空を舞うミサゴ
 ヨシ原の王者で、タカの仲間の冬鳥チュウヒも来ていた。低空で飛んで獲物を探すが、私が目を付けたチュウヒは、このパトロールコースがおおむね一定していた。

カワウソと間違えられることもあるヌートリア
 観察で午前と夕方の各1回、姿を現すことが判明。この場合は狩りの邪魔にならないよう車内で待機して撮影機会をうかがう。車外に出ないのが原則だ。タカの仲間の留鳥ミサゴも、捕獲した大型の魚をつかんで上空を通過する。

 農地の脇を流れる狭い水路には、美しいカワセミがメダカやエビを狙って現れる。カワセミは、川では狩り場などがある程度決まっているので待機も可能だ。しかし水路では大量繁殖したメダカを餌にし、すぐに満腹状態となるため、行動を予測しての発見は極めて難しい。


 カワウソと間違えられる外来種ヌートリアも多い。畑のニンジンなどを食べるので農家の嫌われ者だ。旧日本軍が昭和15(1940)年頃、防寒用の毛皮確保に飼育を勧めた大型のげっ歯類で、戦後は日本各地に生息域が広がり、泳ぎが達者でヨシ原の“住人”と化している。

 中国地方の最高峰で鳥取県の大山(1729メートル)は11月1日、初冠雪を観測したが、ふもとの米子市に初雪が舞うころには、さらに多くの冬鳥たちでにぎわうだろう。

https://www.sankei.com/west/news/181120/wst1811200004-n1.html
https://www.sankei.com/west/news/181120/wst1811200004-n2.html
https://www.sankei.com/west/news/181120/wst1811200004-n3.html
https://www.sankei.com/west/news/181120/wst1811200004-n4.html

posted by BNJ at 20:28 | Comment(0) | 野鳥ニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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