2018年12月28日

【伝統芸能】<お道具箱 万華鏡>能「鷺」の鷺冠 生き続けるコサギの羽根【東京新聞2018年12月28日】

譲渡されたコサギの飾り羽根で修繕された鷺冠

 能の道具には、本物の鳥の羽根を材料としたものがある。「鷺(さぎ)」という演目で使う冠にも白い羽根が必要なのだが、今年はひょんなご縁から、この羽根を追いかける年となった。

 というのも昨年、宝生流の能楽師・東川光夫さんから「鷺冠(さぎかん)の羽根がなくて困っている」という話を聞いたからだ。

 宝生能楽堂(東京・水道橋)の蔵には、鷺冠が四つある。その名の通り、鷺の役(主役)がつける冠で、デコイ(鳥の模型)のような鷺の飾りが載せられている。ポイントは頭部からすっと伸びる白い羽根。ところがいくつかの冠は、羽根が紛失していた。

 実は、東川さんとは、二年前から一緒に羽根について語り合う仲。この連載で「羽団扇(はうちわ)」をとりあげた際にお世話になったのだが、取材後も、材料となる希少種の鳥の羽根をどのように調達すべきか、意見交換をしてきた。

 能の道具は、羽根のほかにも動植物を素材にしたものが多くある。豊かな自然があってこその道具。こうした話から、環境保全活動を行う日本自然保護協会や動物園とも対話を重ねるようになった。

 動植物の専門家と親しくなると相談もしやすい。鷺冠の話をすると、彼らは手際よく動き、サギ類を多く飼育する井の頭自然文化園(東京・吉祥寺)の協力をとりつけてくれた。

 そして七月。東川さんが所属する能楽団体に、羽根が正式に譲渡された。羽根の主はコサギ。輝くような純白の鳥で、繁殖期が近づくと背中にレースのような美しい飾り羽根がはえる。それが抜け落ちるタイミングを見計らって、飼育員が拾い集めてくれた。

 十一月。東川さんが修繕した冠を見てきた。誂(あつら)えたように羽根の長さもぴったり。廃棄されるはずだった羽根は、これから能の道具となって生き続けていく。 (伝統芸能の道具ラボ主宰・田村民子)

背中と胸に飾り羽根がついている時期のコサギ=井の頭自然文化園提供
http://www.tokyo-np.co.jp/article/entertainment/tradition/CK2018122802000185.html

http://archive.is/ziMvo

posted by BNJ at 10:23 | Comment(0) | 野鳥ニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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