2019年01月08日

愛知万博の原点「海上の森」を未来へ 今も続く生物調査【朝日新聞デジタル2019年1月8日】

動植物を調査するNPO法人「海上の森の会」のメンバーら=2018年12月20日午前9時50分、愛知県瀬戸市海上町、松永佳伸撮影

 愛知県瀬戸市の「海上(かいしょ)の森」。絶滅の恐れがあるオオタカの営巣が確認され、保護を求める大規模な活動が起きた結果、2005(平成17)年の愛知万博の主会場から変更された。市民が守った、万博の象徴と言える森のいまは。

NPOが保全、伝承活動
 希少な植物が残り、鳥が舞う。大規模開発を免れた里山は、多くの動植物が生き続ける自然の宝庫として残った。

 2005(平成17)年に開催された愛知万博「瀬戸会場」だった愛知県瀬戸市の「海上(かいしょ)の森」。森を管理する「あいち海上の森センター」によると、豊かな自然を体験しようと、今も毎年約10万人が足を運ぶ。自然観察会や散策のほか、起伏を利用して森の中を走る「トレイルランニング」をする人たちという。

 「正月には家の前に砂で階段の絵を描いて、門松や鏡餅を飾り、神様をお迎えするんです」

 NPO法人「海上の森の会」理事長の石川明博さん(70)は、森を訪れる人たちに、海上地区に伝わる風習を説明している。万博の前年に会が設立され、現在の会員は約150人。海上の森を保全し、身近な里山の食や歴史、文化を伝える活動を続けてきた。

ログイン前の続き 今、海上地区に住むのは2人だけだが、森にはかつて集落があった。住民は手を入れながら森を維持して間伐材を薪にし、森の池から水を引いて農作物を栽培してきた。

 人と里山の良好な関係を紹介するため、同会はホタルの観賞会やお月見、どんど焼き、農作業の体験など、1年を通じて様々な行事を開いている。

主会場候補地にオオタカの営巣
 民有地20ヘクタールを含む約530ヘクタールの広大な森は当初、愛知万博の主会場の候補地だった。跡地には万博後、住宅地が開発されるはずだった。

 だが、緑に覆われた里山を切り崩す計画に、市民や環境保護団体などが反対運動を展開。開幕まであと6年の1999年、絶滅の恐れが指摘されていたオオタカの営巣が確認された。反対の声はさらに高まり、計画は大幅に見直された。

 主会場は瀬戸市に隣接する愛知県長久手町(当時)の愛知青少年公園(今は愛・地球博記念公園)に変更された。万博には185日間の開催期間中に、国内外から2204万人が訪れた。

 海上の森での計画は150ヘクタールから約15ヘクタールに縮小。「瀬戸会場」として、森を散策する遊歩道などが整備されるにとどまった。

 その結果、オオタカが飛来し、東海地方固有のシデコブシの自生地は今も健在だ。ギフチョウ、ハッチョウトンボ、ムササビなどもいる。石川さんは「海上の森は万博の原点」と考えている。「多くの人に自然への関心を呼び起こすきっかけになった。市民が守った森と言っても過言ではないのです」

日本ユネスコに登録
 同会は、万博翌年の06年から、毎週木曜日に生物季節調査を続けている。主婦や元会社員、元大学教授らシニア層を中心とした会員15人ほどが2班に分かれて森に入る。五感を研ぎ澄まし、鳴き声から鳥の種類を聞き分けたり、道ばたの草花に目を光らせたりしながら、約5キロの道のりを歩き、昆虫を含む動植物の生息状況を記録する。

 これまでの取り組みが評価され、2016年に日本ユネスコ協会連盟の「プロジェクト未来遺産」に登録された。

 副理事長の浦井巧さん(67)は愛知県職員時代から活動にかかわってきた。「100年後の子どもたちに、この森を引き継いでいくのが私たちの使命なんです」

 愛知万博のテーマは、地球環境や自然との共生を考える「自然の叡智(えいち)」だった。地道な活動は今も、これからも続く。(松永佳伸)

取材後記 自然遺産として後世に
 海上の森に足を踏み入れたのは約20年ぶりだった。山道をゆっくりと歩いていると、小鳥のさえずりや小川のせせらぎが聞こえ、当時の記憶がよみがえってきた。

 20分ほど進むと視界が開け、木々に囲まれて田畑が広がる。木造の古い民家が数軒ある光景も昔のままだ。

 そのうちの1軒は、里山サテライト(愛称・かたりべの家)として生まれ変わっていた。一度、解体した部材を活用して建てられたという。

 愛知万博が残した自然遺産として後世に受け継いでいくことを心に誓った。そして、暖かくなって植物が芽吹き始めた頃、また歩いてみようと思った。
https://www.asahi.com/articles/ASLDT3QR4LDTOIPE00V.html

http://archive.ph/l1pLB

posted by BNJ at 21:52 | Comment(0) | 野鳥ニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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