2019年01月10日

平成の記憶 埼玉の30年/9 「トトロの森」と「おおたかの森」 森林保全、鍵は「人」 自然と里山の知恵、次世代へ /埼玉【毎日新聞2019年1月10日】

 風にあおられて枯れ葉が、雨のように落ちる。鳥の声が三つ、四つ。誘われて、双眼鏡を木々のこずえに、茂みに向ける。自然のものにだけ耳を傾け、目を凝らし、深く息をする。「いい気持ちだ」。誰ともなく言った。

 昨年12月8日、所沢市三ケ島の狭山丘陵で8人が野鳥観察を楽しんだ。公益財団法人「トトロのふるさと基金」が取得した「トトロの森」20、21号地と県の緑のトラスト保全地、市の里山保全地域が入り組む森だ。

 所沢には狭山丘陵の「トトロの森」、市民団体「おおたかの森トラスト」が管理する平地林「おおたかの森」とともに、官民双方の運動で生態系の多様性を保全する豊かな森がいくつかある。平成まもなく保全活動が始まり、両団体が推進に大きな役割を担ってきた。

 同基金は1990年、狭山丘陵での早稲田大新キャンパス建設に伴う保全運動を展開した団体を母体に発足した。宮崎駿監督のアニメ映画から名をもらった「トトロの森」として、県境をまたぎ2都県4市に計約8・9ヘクタールが広がり、48号地まである。

 おおたかの森トラストは、同基金と母体を一部共通しながら、平地林の保全を進めるため、94年に活動を始めた。「オオタカがすめる森づくり」を目指し、所沢を中心に県内6市町に22カ所計約9・5ヘクタールに至る。

 両団体が活動している県西南部は都心から近く、高度成長期以降、森や畑を削り住宅や工場建設など開発が進んだ。ごみや建設残土が不法投棄され、資材置き場などがあちこちにできた。こうした中、両者の活動が順次始まった。

    ◇

 運動の進め方はやや異なる。同基金は「トトロ」の知名度を生かし、募金や寄付を集めて単独で土地の購入を進めてきた。専務理事の荻野豊さん(70)は「早稲田進出で県は自然を残すと約束したが、対応が遅く、口約束になりかねなかった。自分たちがやるしかないと思った」と振り返る。

 一方、おおたかの森トラストは、97年に県、狭山市と共同で樹林地を購入するなど行政とタッグを組んでいる。足立圭子代表(75)は「平地林は開発しやすく、どんどん売れてなくなってしまう」と語る。

 なぜ、このような運動が所沢で生まれたのか。足立さんらの答えは明確だった。「人」だ。生物の多様性を訴える専門家ばかりでなく、自然が身近にある環境を求めて移住した人たちがボランティアで参加し、運動を支えた。行政にも理解が深まり、協力が進んだという。

 ただ、今後も森を増やし管理し続けるには、年代を超えて人が参加する必要がある。荻野さんは「地元の森は地元で守るとか、それぞれの地域のボランティアに委託するとか。どうやって管理していくかは課題です」という。過去も未来も鍵は「人」なのだ。

 関心を高めて参加を促すため、両団体とも自然に触れる機会の提供だけでなく、落ち葉で堆肥(たいひ)を作り、間伐材で炭を作り、きのこを育てるなど、かつての生活林としての里山活用とその技術継承を進める。小中学校の授業に取り入れることも進める。

 所沢市の資材置き場を再生した「おおたかの森」で昨年11月29日、地元の中学校2校の生徒25人が間伐、まき割りなどに汗を流していた。慣れない作業に苦戦しつつも初めての経験に「楽しい」と話す。間伐はクリの木を切るようにと指示され、最初に葉の形などの説明を受けたが、「これでいいのかな」と間違えることも。足立さんは怒らない、むしろ目を細めて見ている。「こうやって覚えていくから」【清藤天】=つづく
https://mainichi.jp/articles/20190110/ddl/k11/040/093000c

http://archive.is/OoTea

タグ:オオタカ
posted by BNJ at 21:00 | Comment(0) | 野鳥ニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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