2019年02月05日

(e潮流)増えたトキ、「多様性」の悩み 竹内敬二【朝日新聞デジタル2019年2月5日】

 国の特別天然記念物のトキが増え、環境省は1月末、絶滅の恐れがある国内の野生生物の状況をまとめた「レッドリスト」での危険度のランクを、これまでの「野生絶滅」から1ランク低い「絶滅危惧1A類」に見直した。

 日本産の最後のトキは2003年に死んだ。しかし、中国から提供を受けて始めた復活活動がうまくいった。人工繁殖を繰り返して数を増やし、08年には新潟県佐渡島での放鳥を開始した。12年には放鳥のトキ同士にひなが誕生。今は野生の状態で約350羽。「ホッとひと息」にこぎつけた。

 トキが生息するにはエサが必要だ。とりわけドジョウが好きだ。オタマジャクシやカエル、ミミズ、タニシ、バッタなど、動物性たんぱく質はほぼ何でも食べる。そのために、佐渡市は農薬も化学肥料も大きく減らす「生き物をはぐくむ農法」を進めている。水田には深い溝を掘り、水を抜く時期にも干上がらないようにする。休耕田には一年中、水を張る。生き物が途切れないようにするためだ。

 これこそ生物多様性に富んだ環境づくりだが、悩みもある。こんな農法は雑草が増え、手間がかかる。高齢化が進む農家には負担だ。最近はトキの数が増える中で、「田植え直後の苗をトキが踏んで困る」という声も出てきたという。佐渡市トキ保護係の村岡直係長は「それでもなぜこれをするのか、農家に繰り返し、地道に説明して理解してもらうしかありません」という。

 佐渡市では、ブランド米「朱鷺(とき)と暮らす郷」を認証し、売っている。トキがすめる環境と農業とを両立させている誇りだ。今後はトキの保護を観光や地域活性化につなげたい。長い道のりだ。

 悩みはもう一つある今のトキはすべて中国産の5羽の子孫なので、遺伝的な多様性が乏しい。環境の変化に弱く、何かの病気が発生すると一気に広がる危険性がある。同様に、過去に何度か絶滅に近い数にまで減ったチーターは近親交配を繰り返した結果、遺伝的多様性が乏しくなってしまった。

 トキのこの問題は人の力ではなかなか改善できない。昨年、中国から新たに2羽が提供された。2羽が少しでも多様な子孫をつくることを願いたい。(元朝日新聞編集委員)
https://www.asahi.com/articles/DA3S13881036.html

http://archive.is/3L5E3

タグ:トキ 佐渡島
posted by BNJ at 21:01 | Comment(0) | 野鳥ニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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