2019年08月04日

服装?人相?それとも…記者がカラスに襲われたワケ【毎日新聞2019年8月4日】

ごみ袋の山に群がるカラス。清掃員がシートで覆うまでの少しの時間を狙ってカラスが集まる=札幌市中央区で2018年6月15日早朝、貝塚太一撮影
 先日、突然カラスに襲われた。頭部を何度もわしづかみにされたが、幸いけがはなかった。でもなぜ?と疑問が残る。カラスを刺激するような身なりだったのか、あるいは敵と確信されるほど人相が悪かったのか。そこで「カラス博士」と呼ばれる宇都宮大名誉教授の杉田昭栄さん(形態学)を訪ねて謎解きをしてもらった。【統合デジタル取材センター/江畑佳明】


口の中が赤いカラスと目が合う
 7月上旬の朝。会社へ向かおうと東京都内の歩道をいつものように歩いていると、「カアーッ!」という鳴き声が聞こえた。車道と歩道を仕切る高さ1メートルほどの柵の上に、1羽のカラス。何度もカアカア鳴くので、こちらも足を止めてしばし観察した。

 「やたらに口を大きく開けているな」「口の中って赤色なんだ」と感心していると、そのカラスと目が合った。なんだか気味悪く感じたので立ち去ろうとすると、どこからかもう1羽が飛来し、そのカラスの隣に身を寄せた。

繰り返し頭を「わしづかみ」される
 「つがいなのかな」と思いながら、通勤モードに切り替えて再び歩き始めた。その直後だった。背後から「バサバサッ」「カアーッ」という大きな音と鳴き声が聞こえ、頭部をわしづかみにされた。さっきのカラスだ。カラスなのにわしづかみとは!

 パニックになって、猛ダッシュで逃げ出したが、またすぐ頭に爪を立てられた。手をブンブン振り回して払いのけようとしても、カラスは執拗(しつよう)だった。建物の柱の裏に逃げ込むと、ようやく、どこかへ飛んでいった。ものの10秒ほどの間に3回も攻撃された。ハアハアと息を切らしてビルのガラスに映し出された自分の姿を見ると、髪はぐしゃぐしゃ。「鳥の巣」だった。

親ガラスに襲われた可能性

ハシブトガラスの剥製を手にする杉田昭栄・宇都宮大名誉教授=宇都宮市で2019年7月11日、江畑佳明撮影
 その事件からしばらくして、宇都宮大の杉田さんの研究室に足を運んだ。研究室にはカラスの剥製がいくつも置かれており、あのときの恐怖がよみがえる。

 「最初にいたのが子ガラスで、襲ったのは親ガラスでしょうね」と杉田さんが語り出した。え? 確かに2羽いたが、体の大きさにほとんど差はなかったはず。「口の中が赤いのは子ガラスの特徴です。カラスは成長が速く、すぐに親と見分けがつかないほど大きくなります」と、杉田さんは言う。

「目が合った」のがいけなかった
 では、なぜ記者は襲われたのだろうか。


電柱に作った巣で子育てするカラス。ヒナの口の中は赤い=三重県四日市市で2010年6月22日撮影
 「子ガラスと目が合ったのがいけなかったのでしょう。カラスはだいたい4月ごろに卵を産み、子は6月くらいに巣立ちして周囲を飛び始めます。親はその様子を近くでじっと見守っています。そこで『子が危害を加えられる』と判断すると、子を守るために襲ってくるのです」

 つまり記者が子ガラスを凝視したことで、付近で警戒していた親ガラスが「我が子のピンチ!」と思った、というわけだ。

 記者がもし、子ガラスを棒でつつくなどちょっかいを出していれば、親ガラスに逆につつかれるなど、もっと激しい攻撃を受けた可能性があるという。「狙われやすい服装はあるのですか」と杉田さんに質問すると、「特に確認されていません」とのことだった。

むやみに攻撃はしない
 鳥が襲う、といえばヒチコック監督の映画「鳥」(1963年)を思い出す人も多いのではないか。映画では、鳥たちが人に襲いかかり、人々は悲鳴を上げながら逃げ惑う。カラスの大群がびっしりとジャングルジムを埋め尽くすシーンには、ゾッとさせられる。だが、杉田さんは「カラスがむやみに人を攻撃することはありません。安心してください」と断言した。ホッ。やはり、あれは作り話だったか。

 「ただ……」。杉田さんはそう言って首をかしげた。「カラスが人を襲うのは、卵を産む4月から、子が巣から離れる6月いっぱいくらいまでなんですよね。この間は親カラスが非常に警戒心が強いので要注意です。7月に入ってからのケースは珍しいですよ」。とほほ。記者は相当運がないようだ。


木に止まったカラス=杉田昭栄さん提供
襲われたらどうする?
 ではカラスから身を守るにはどうすればいいだろうか。

 杉田さんは「もし目が合ってしまったら、両手を広げて自分を大きく見せてください。『普段見ている人間より体が大きい』と恐怖心を抱かせることができます。もし傘を持っていれば広げたり、振り回したりして、応戦するのもよいでしょう」と語る。

 もし何も持っていなかったら?「走っても追いかけてくるので、しゃがむなど低い姿勢をとり、耳や目などの顔面を守ってください。カラスは人間の弱い部分を知っていて、そこを狙ってつついてきます。きちんとガードすることが肝心です」

 そして、杉田さんは「人とカラスがほどよい距離をとって『共生』できるよう、カラスの習性を知っておくことは大事だと思います」と話した。

東京都内では減少傾向

羽を休めるカラス=杉田昭栄さん提供
 杉田さんによると、東京都内に生息するカラスは約9割がハシブトガラス、残り1割がハシボソガラスという。都のホームページによると、「ハシブト」の体の長さは平均で57センチ、くちばしが太くて肉を好む。「ハシボソ」は体長約50センチとやや小柄で、植物を多く食べる傾向にある。

 東京都内のカラスの生息数はえさとなるごみが多いなどの理由で急増し、2001年には約3万6400羽に達した。このためこの年に石原慎太郎知事(当時)の肝煎りで対策チームが発足。ごみにネットを張るなどの対策の周知や、捕獲や巣の撤去などを継続して実施してきた。その結果、2018年には約8800羽にまで減少している。

 杉田さんは、カラスに人間との距離が大事だとわからせることが重要だと指摘する。「ごみ袋をあさっているカラスを見かけたら、追い払ってください。『ごみに近づいてはいけない』というメッセージになります。共生のためには必要なことですから」
https://mainichi.jp/articles/20190804/k00/00m/040/056000c

http://archive.fo/49oMI

posted by BNJ at 20:52 | Comment(0) | 野鳥ニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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