2020年03月05日

小社会 啓蟄|高知新聞

 牧野植物園を歩いてみた。例の「咲いています」の札はまだ少ないものの、カンヒザクラや桃の花は見ごろ。野鳥が飛来し、蜜を求めて枝から枝へと忙しい。季節は確かに移ろっている。

 きょうは二十四節気の啓蟄(けいちつ)。土の中で冬ごもりしていた虫たちがはい出す候とされる。〈啓蟄の高々(たかだか)鳥の鳴き過ぎし〉阿部みどり女。地上の虫が動き始めると、上空もにぎやかになって、春らしさが増していく。

 かつての本紙連載「季のうた」にはユニークな句もある。〈三月や俺の腹にも虫居たり〉金子嵩。虫にもいろいろあって地中にいるだけではない。人の体内にも時にかんしゃく玉を破裂させる虫がいる、という解説がつく。

 新型コロナウイルスへの警戒が続く。虫たちの目ざめとは逆に、人間たちは外出にも二の足を踏む「蟄居(ちっきょ)」か「巣ごもり」のような春になった。県内でも多くの学校が休校し、選抜高校野球も開催するなら無観客に。春の風物詩が本来の姿でなくなるのはやはり寂しい。

 政府がクルーズ船対応や唐突な休校要請で批判を浴びている。そんな中、野党や国民の声を聞くべきと注釈はつくが、首相側近の「今は批判や糾弾の段階ではない」という発言が気になった。非常時は政府方針に異を唱えず一致団結せよ、という意味ならば、過去に照らして危うさも感じる。

 腹の虫もうずきそうな制約の春である。人の世界にとって本当の「啓蟄」が待ち遠しい。
https://www.kochinews.co.jp/article/350589/
http://archive.md/Gr7st

posted by BNJ at 10:59 | Comment(0) | 鳥類コラム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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