2017年11月12日

折々のことば:931 鷲田清一【朝日新聞デジタル2017年11月12日】

 鳥の魂は空で、空の身体は鳥だ。
岩田慶治■鷲田さんのことば 人間からすれば、空を飛ぶ鳥も、庭の小枝に止まる鳥も、籠の中の鳥も、焼かれた鳥も、みな鳥だ。が、鳥にとっては、空の懐深くに抱かれて自由に飛ぶ時だけが鳥なのだと、文化人類学者は言う。鳥は空を魂とし、のびやかに飛翔(ひしょう)する。空は鳥を身体とし、その透きとおる広がりを自在に描く。そこでは、飛ぶことと身をまかせることが一つとなっている。『カミの人類学』から。(鷲田清一)http://www.asahi.com/articles/DA3S13225053.html

http://archive.is/IyGC7

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2017年11月11日

【ハイ檀です】ニワトリ【産経ニュース2017年11月11日】

我が家で朝食をとる鶏

 最近、我が家の食客が増えた。夫婦2人に加え黒ラブ1頭との暮らしだったが、一気にあと5つ分の口を満たす羽目になった。回りくどい言い方はやめにしよう、何のことはない隣の家の鶏の家族が毎日5羽我が家にやって来るのだ。立派な雄鶏1羽に、雌が4羽。ただし、雌同士の諍(いさか)いがあるのか、一羽の雌は単独でやって来る。ある朝、庭に鶏が迷い込んで来たから、後先のことを考えずに野鳩用の餌を与えたのである。

 どうやら、これが間違いの元。その日を境に、毎日のように鶏たちは顔を見せるようになった。そもそも、鶏の語源は、庭の鳥『庭っ鳥』という言葉から始まったらしい。庭の鳥に反して、野生の鳥は『野っ鳥』と呼んでいたとか。何(いず)れにしても、キジ科の野鳥が人間に馴(な)れ、犬や猫と同じ家畜となったのだ。

 隣の家と申しても、我が家から直線距離で200メートルは優にある。最近は、至る所にイノシシ除けの鉄柵が設置されているから、かなり遠回りしなければ我が家にはこれない筈(はず)。何故、ニワトリ達は我が家を訪れるのだろうか。最近その理由が、判明。5羽の飼い主夫婦が、別居されたという噂。しかも、鶏の世話係の奥様が家出。犬や猫ならば、ペットを連れて家出も可能。だが、鶏を抱えての家出という話は聞いたことがない。

 以前に一度、鶏達が我が家に迷い込んで来たことがある。その時は奥様が悲壮な声を挙げ、鶏を呼び寄せておられた。僕は愛犬をリードに繋(つな)ぎ、ゆっくりと鶏を追い立てる。不思議なもので、犬は自分の役目を忽(たちま)ちに理解し、吠えることなく鶏を追う。鶏は観念したのか、早足で自分の家へと帰っていく。その時、奥様に伺った話では、4羽の雌は毎日のように、勤勉に卵を産むのだとか。有精卵だから、格別においしと自慢されていた。

 この平和な事件の際、鶏を送り返したお礼に卵を4ついただいた。赤みがかった卵で、黄身は濃い色で、箸(はし)で押してもなかなか潰れない上等の卵。この件を境に、妻に鶏を飼おうかと提案をすると、即座に拒絶。理由は明快、「鶏を飼うと夜明け前に起きなくてはならないし、卵目当てに蛇が来るから嫌です」。そう言えば昔、早朝に鳴くニワトリ公害事件を、新聞で呼んだことがある。妻は能古に移り住んだ時から、「蛇が来るから、鶏は絶対イヤ」と主張していた。「鶏は三歩歩くと忘れる」の譬(たと)えの通り僕はそのことをすっかり忘れていたのである。

 お隣のお宅に何が起こったのかは、どうでも良い話。が、鶏の世話をされていた奥様がいなくなってしまった後、どうやら餌を貰(もら)っていないようにも思える。毎朝夜明けと同時に、雄鶏の時を告げる鳴き声が庭先に響き渡る。「ハーイ、お早うございまーす」と鳴き、雌達はコッコッコーと明らかに餌を催促している風情。愛犬の排便を庭でさせるついでに、大量に買い置きをした鶏の餌を与え、朝の行事は終了。時間は、ほぼ6時半である。

 ここ数カ月、鶏達は朝食を済ませると、満足そうに木陰でまどろんだり、砂っ気の多い乾いた場所で砂浴びをしてリゾート気分に浸っている。が、我が家では、1個たりとも卵を産む気配がない。連中がくつろいでいる場所の辺りに、スチロールの箱の中に、藁(わら)を敷いて卵を産み易くしてあげているのだが…。

 近所でやはり鶏を飼っておられる方に伺うと、明け方に卵を産んでから餌探しに出かけるとのこと。となると、隣の鶏に卵を産ませて味わうなんてうまい話は成立しないわけである。高い餌をただ喰いされた挙句、鶏の写真を写していたら、背後から雄鶏のキック攻撃を浴びる始末。

 後ひと月ちょっとで、クリスマス。昨年から顔を見せていなかった孫娘もやって来る。彼女は山の中で暮らしているので、ジビエ料理には臆するところがない。だったら、思い切って1羽に犠牲になって貰おうか。お隣さんのニワトリは、今や殆(ほとん)ど『野っ鳥』の状態である。一羽が消えても問題はなかろう、と、妄想がふつふつと湧き出すが、一体誰が解体をするのであろうか。てなことを考えると、買った方が良いという結論に達する。情けない話だが、我が家ですらこんな有様。伝統ある和食の技術や文化は、どう変ってしまうものであろうか。

                  ◇

【プロフィル】

 だん・たろう 1943年、作家・檀一雄氏の長男として東京に生まれる。CFプロデューサー、エッセイストとして活躍し、「新・檀流クッキング」などの著書多数。妹は女優の檀ふみさん。
http://www.sankei.com/region/news/171111/rgn1711110047-n1.html

http://archive.is/UJFIQ
タグ:ニワトリ
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中日春秋【中日新聞2017年11月11日】(セキセイインコ)

 セキセイインコの故郷は、乾燥して餌も乏しい豪州の内陸部だ。この鳥にとっての恋の季節は、大地が潤って、実がなる雨期。そんな鳥を小さなかごに入れ、餌をたっぷりと与え続けていると生殖のめぐりがおかしくなり、卵を詰まらせてしまうことがあるそうだ

▼獣医師の田向(たむかい)健一さんの著書『珍獣の医学』によると、鳥などにとって、卵詰まりは命に関わる病気。治療には、人間には陣痛促進剤として使われるホルモン剤を使うというから、驚きだ

▼この卵詰まりには、よほど強力な「陣痛促進剤」が使われたのだろう。きのう新設を認める答申が出された、加計(かけ)学園の獣医学部である

▼行政手続きへの首相官邸の関与が疑われ、文科省の前事務次官は「行政が歪(ゆが)められた」と証言した。真相究明は不十分なままなのに、なぜか、卵は産み落とされた

▼田向さんは著書で、獣医師が果たすべき「五つの責任」を説明している。飼い主への責任、同業者への責任、社会への責任、自分自身への責任、そして動物への責任。たとえば、飼い主が無理筋の治療を求めた場合、それに応じることは、飼い主への責任を果たすことにはなっても、動物への責任や社会的責任などを果たすことになるのか

▼そういう複雑で重い責任と向き合うのが獣医師の仕事だというが、今回の新設答申で果たされたのは、誰への、どういう責任なのだろう。
http://www.chunichi.co.jp/article/column/syunju/CK2017111102000115.html

https://megalodon.jp/2017-1111-1108-59/www.chunichi.co.jp/article/column/syunju/CK2017111102000115.html
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2017年11月09日

女の気持ち 柿の木 滋賀県栗東市・伊勢田恵子(主婦・74歳)【毎日新聞2017年11月9日】

 裏庭に柿の木が1本あって、毎年実を結ぶ。その小さな木がいつごろからあったのか、記憶は定かでないが、小学生だった娘が一度に19個もの実を取って盆に盛り、台所に運んできたのを思い出す。

 どれも小粒で固く、種が多くて扱いが面倒だった。皮をむいて薄く切り、「柿せんべい」と称して食卓に出した。ただ、針のように細く切ってサラダに混ぜると、色合いが美しくなり、ほのかな甘みが加わって、これには重宝した。

 夫が牛乳パックを切って窓を作り、中にミカンやリンゴを入れて枝につるしておくと、鳥が来るようになった。

 メジロは必ず2羽で来て、片方が食べている間は他方が見張りをしていた。大きな黒い鳥が近づくや、サッと2羽で飛び立っていった。

 柿は年ごとに種が少なくなり、実も柔らかくなって、おいしく食べられるようになった。

 今年は少数精鋭なのか、15個しか実らなかったけれど、形がよく、大きいものばかりである。木の中央に1個だけ特別に色つやのよい実があって目立っている。夫が軍手で磨いたせいらしい。

 ソファに座ってお茶を飲みながら、時折訪ねて来る小鳥を見ていると心が安らぐ。

 緑の葉は徐々に色を変え、紅葉が舞い散るに連れて秋が深まってゆく。

 来年もまた、このソファに座って、刻々と変化していく柿の木を見ているのかな?
https://mainichi.jp/articles/20171109/ddn/013/070/050000c

http://archive.is/Vtref
タグ:メジロ
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2017年11月05日

社説 あすへのとびら ライチョウ保護 神の鳥を未来へ伝える【信濃毎日新聞2017年11月5日】

 信州大名誉教授の中村浩志さん(鳥類生態学)を長野市内の研究所に訪ねた。

 絶滅が心配されるニホンライチョウの研究を長年続けている。70歳になった今年も保護活動で85日間、山に入った。

 南アルプス・北岳でのケージ保護が今年、いい結果を残すことができたという。「先の見通しがようやく開けてきた」と明るい表情で話していた。

   <つかんだ手掛かり>

 ひなの死亡率が高いふ化後1カ月間ほど、母鳥と一緒に金属製のケージに入れて天敵から守る。昼間は外に出して自由に運動、採食をさせ、夕方ケージに誘い込む。人間を恐れない鳥だからこそできるやり方だ。

 昨年は15羽のひなを保護したものの、保護が終わって放鳥したあと動物に襲われたのか、秋には3羽しか残らなかった。今年は16羽保護して15羽残った。

 天敵を駆除した効果が大きかったと中村さんはみる。

 今年初めてケージの周辺で6匹のテンをわなで捕まえ、動物園に移した。問題の深刻さを環境省も認めて特別保護地区内での捕獲を許可した。

 あと2年続ければケージ保護の技術を確立できそうだという。

 ケージ保護は環境省が3年前から始めた事業の一環である。同省は並行して平地での人工飼育を進めている。北アルプス・乗鞍岳で採取した卵を大町山岳博物館など全国5カ所の施設に運び、繁殖を試みている。

 今年は大町と上野動物園、富山市ファミリーパーク3施設で各1組、計3組のペアが60個の卵を産んだ。そのうち22個がふ化し12羽が元気に育っている。

 人工飼育の命が次の代へつながった。大きな前進である。

 人工飼育で難しいのは感染症だ。生後10日ほどで死ぬケースが多い。かつて大町で2004年まで約40年続けた飼育が行き詰まったのも、感染症を克服する道が見つけられなかったためだ。

 研究はこの面でも進んでいる。母鳥の盲腸でつくられる盲腸糞(ふん)と呼ばれる特殊な糞をひなが食べることで、親から子へ腸内細菌が受け渡され、有害物質だらけの自然環境を生き抜く力を獲得することが分かってきた。

 いま京都府立大などで盲腸糞の内容の研究が進んでいる。解明が進めば“予防ワクチン”が開発できるかもしれない。

 ライチョウを脅かすものは他にも多い。ニホンジカが高山帯に進出し、ライチョウの餌となる高山植物を食べてしまう。乗鞍岳ではハシブトガラスが卵を捕食していることが確認された。猿がライチョウのひなを襲う様子も中村さん自身が目撃した。

 長野、新潟県境の火打山ではイネ科の植物が高山植物帯に入り込み、昨年から試験的な除去が始まった。高山植物を痛めないよう、丁寧に1本ずつ取り除く根気の要る作業である。

   <今なら間に合う>

 1980年代に3千羽ほど生息していたのが2千羽弱にまで減ったとみられている。生息地は信州とその周辺の高山に限られる。

 トキやコウノトリは保護に取り組み始めた時は既に数が減り過ぎて、絶滅を防ぐことができなかった。いま新潟県佐渡ではトキ、兵庫県豊岡市などではコウノトリの繁殖、放鳥事業が進められている。いずれも外国から譲り受けた個体を元にしている。

 ライチョウは今のところ、まとまった数が自然状態で維持されている。まだ間に合う。生息地の一つ御嶽山でも、心配された噴火の影響は大きくなさそうだ。

 伊豆諸島鳥島のアホウドリは生息地保全が効果を上げ、絶滅が心配な状況を脱しつつある。ライチョウでも希望を持ちたい。

 長野県が今年、情報提供や啓発活動をするボランティア「ライチョウサポーターズ」を募集したところ、約250人が講習を受けて登録された。県民の関心も高まっている。心強い。

 古来「神の鳥」として大事にされてきた。山岳信仰の生き証人としても貴重な鳥である。登山者の目の前を親子連れで悠々と横切ったりする。

 北アや南アの高山帯はもう雪に覆われている。キツネなどの天敵が里に下り、ライチョウにとっては安全で過ごしやすい季節になった。春に生まれたひなも母鳥と一緒に安らいでいることだろう。

 今年つかんだ手掛かりを確かな保護へとつなげていきたい。
http://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20171105/KT171104ETI090004000.php

http://archive.is/phjo4
posted by BNJ at 22:13 | Comment(0) | 鳥類コラム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする